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富山県とunerryが、能登半島地震の避難行動を人流ビッグデータで検証 EBPMで挑む富山県の防災強化<分析編>

富山県とunerryが、能登半島地震の避難行動を人流ビッグデータで検証 EBPMで挑む富山県の防災強化<分析編>

月間840億件超の人流ビッグデータを蓄積するunerryのリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」は、自治体における課題解決にも活用されている。

令和6年元日に発生した能登半島地震においては富山県内でも観測史上最大となる最大震度5強が6市1村で観測された。本記事では、31年ぶりとなる津波警報発表時の住民避難行動の検証に人流データを活用した事例について紹介する。

(記事提供:株式会社unerry)



震災直後の避難行動における課題が顕在化

富山県は本州の日本海側中央に位置し、豊かな自然と伝統が息づく地域だ。日本海の新鮮な海の幸に恵まれた、美食の地としても知られる同地だが、北陸新幹線の開業により東京からのアクセスが向上し、観光・経済ともに注目されている。


令和6年1月1日16時10分に発生した能登半島地震では県内で観測史上最大となる最大震度5強が6市1村で観測され、16時12分には富山県で31年ぶりとなる津波警報が発表された。

震災直後、県内各地で渋滞が発生するなど、避難行動や災害対応におけるさまざまな課題が顕在化したことから、富山県では人流データ分析、県民アンケート、有識者会議を通して災害対応を検証し、今後の防災体制の強化充実を図るための災害対応検証事業に取り組んできた。

「原則徒歩避難」の推奨にも関わらず約8割が車で避難 各地で渋滞が見られた

富山県の地域防災計画では津波発生時の避難については、「原則徒歩避難」だ。しかし、実際には県内各地で渋滞が見られ、県民アンケートでも「徒歩で避難した人は2割弱に留まり、8割近い方が車で避難」という結果が得られた。またその理由としては「車が一番早い」「車でないと遠くに避難できない」という回答が多くを占めた。

参考:https://www.pref.toyama.jp/documents/43042/shiryo3_anke0830.pdf

県民アンケートと併せて、人流データでも移動手段を把握した。下記の表は、「避難所等※」に車で来訪した人の比率を市町村別に示したものである。大半の市町村において8割以上が車による移動であり、中には9割を超える町もあった。

「避難所等」の定義

指定緊急避難場所(378箇所):

災害の危険から命を守るために緊急的に避難をする場所として、定められた場所。今回は「津波」用の場所のみを利用。

避難所(415箇所):

今回の震災時に開設された避難所の場所。

地震発生直後、県内各地で渋滞が発生したことが課題として挙げられた。では具体的にどの道路で渋滞が起きていたのだろうか。

下記の図は普段(2024年1月1日を含む1ヶ月間)の混雑状況と比較し、震災直後に通行台数が多く渋滞が発生していたと見られる道路を示したものだ。ブルーが濃いほど、混雑度が高い箇所となっている。

<普段の通行量と比較し、混雑が顕著だった主要道路・箇所>



震災直前直後の人流を時系列で比較 「避難所等」以外の場所への避難も見られた


ここでは沿岸9市町における避難状況を可視化し、全体像を把握した(高岡市のレポートを抜粋)。

下記は地震発生直前から1時間ごとに時系列で比較した図である。「16時10分〜17時10分」および「17時10分〜18時10分」においては青く囲んだ地域で見られるように、内陸への移動があった。しかし、「18時10分〜19時10分」を過ぎると南北の移動が収まっていく。

<高岡市における地震発生直前〜3時間後の人流>

さらに、沿岸部にフォーカスし、地震発生後に人が集中したスポットを分析した。多くの市町においては、沿岸部に「津波指定緊急避難場所」が設置されているが、どの程度の利用があったのだろうか。

<高岡市 沿岸部 地震発生後に人が集中したスポットは?>

高岡市の状況を人流データで分析したところ、実際に人が集中したのは「その他指定緊急避難場所or避難所(緑で示したスポット)」や、避難場所には指定されていない高台の病院であった。「津波指定緊急避難場所(青で示したスポット)」の利用は限定的である、という結果になった。

広域移動を伴う避難 沿岸市町以外では他市町村からの移動比率が高い

能登半島地震においては車移動による避難の割合が高い結果となり、市町村を超えた広域移動も見られた。

下記の表は「避難所等」利用者の居住地を分析し、市町村別に示したものだ。南北に長い富山市においては市民比率8割を超えるものの、その他沿岸の市町では6割前後の市町民比率に留まっている。特に赤枠で示した沿岸以外の市町村においては、富山県内他市町や富山県外からの流入比率が高い傾向が見られた。

<市町村を超えた広域移動による避難の割合は?>

富山県担当者へのインタビューはこちらをご覧ください。