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インバウンド先進都市、富良野市が進めるスマートシティー構想とその仕組み[インタビュー]

インバウンド先進都市、富良野市が進めるスマートシティー構想とその仕組み[インタビュー]

北海道の中心部に位置する人口約2万人の北海道富良野市。あのテレビドラマ「北の国から」で一躍注目を集め、夏はラベンダーに象徴される風光明媚な田園風景、そして冬や世界でも有数の雪質を誇るスキーゲレンデという豊富な観光資源を持ち、アジア圏はもとより欧米からも毎年多くの観光客が訪れる。

富良野市はスマホ一つで便利に観光が出来るスマートシティー構想を立ち上げた。

この構想は、富良野に来訪する人々のトラベルジャーニーである、いわゆる「旅マエ」、「旅ナカ」、そして「旅アト」までをスマホ一つでカバーすることが出来るというコンセプトに基づいている。事前の情報収集はもとより、現地の観光情報の多言語化対応や、チケット販売、決済や公共交通機関の案内情報など、富良野市をめぐる外国人観光客が全てスマホ一つで対応できるようにするというのが、その目指すところだ。

出典:富良野市

富良野においてもご多分に漏れず、海外から訪問する観光客の中でも最も多く、そして滞在期間中に多くのお金を落としてくれるのが、中国人観光客である。

富良野市は2019年に日本の自治体として初めてテンセントとのMOU(連携協定)契約を結び、同社との協力関係のものと、中国人観光客の誘致を進めている。中国からの観光客は、テンセントが提供するコミュニケーションアプリWeChatに集めておもてなしをしていくというのが基本的な考え方となっている。

自治体が中国の観光客を誘致する上で、よくありがちな失敗が、HPの中国語対応をしたものの、中国人には実際に見られていないという現象である。

今、富良野市によるスマートシティー構想を、側面から支援をしているインタセクト・コミュニケーションズ 東京支社 営業コンサルティング本部 部長 道明翔太氏は、「中国には特殊なネットの規制があります。他の国とは違って普通にインターネット上でプロモーションを行ってもなかなか情報が届きづらかったりします。例えばURLリンクをクリックしても、そのページのサーバーが日本にあると表示スピードが遅くなったり、ページそのものがみられないという事態が起こり得るのです。したがって、地域の観光協会のページを見るとHPで中国語対応をしているケースがありますが、上記の通りで中国人の方が閲覧するには少しハードルが高いです。そこで富良野市では、中国人のほとんどの方が使っているWeChatの中で富良野市の公式アカウントページを開設してそこでコミュニケーションを取っています。」と、富良野市独自の取り組みの背景を語る。

インタセクト・コミュニケーションズは、同市の担当者と定期的な打ち合わせを行い、コンテンツの方向性を決めたうえで、週1回1記事を作成し富良野市のWeChat公式アカウント上で観光情報を配信する支援を行っている。このアカウントのフォロワーは20代から40代の女性が多くの割合を占めているという。

富良野市では市内でのアクティビティーや、飲食店情報、お土産、バスの時刻表などの観光情報の発信も行っている。また、飲食店でスマホから注文が可能なテーブルオーダーや、チケット販売、スタンプラリー、スマホによる商品スキャンによる多言語での商品説明など、外国人観光客がスマホさえあれば快適な観光体験をすることが出来るための、様々なミニアプリがWeChat向けに限らず提供されているため、日本人でも利用が可能だ。

富良野市では、市内の店舗で様々なQRコード決済が可能な仕組みの導入を推進している。この仕組みはインタセクト・コミュニケーションズ社が提供している「IntaPay」というマルチQRコード決済サービスであり、ユーザーが使っている様々なQRコード決済サービスを自動で判別して決済が行われる。このサービスを導入する店舗は、中国WeChatをはじめ、国内の様々なQRコード決済サービスに対応することが出来る。富良野市の店舗は、このサービスは通信料金以外を無料で導入することが出来る。
これまでに富良野、美瑛、占冠のエリアで100アカウント以上の導入がなされており、該当地域のキャッシュレス化を進めている。

富良野市がこのような先進的な取り組みを導入している要因として、インタセクト・コミュニケーションズの道明氏は「担当者による力が大きい。担当者の方が知見をお持ちで、インバウンドの強化を目的に色々と動かれたことが、今の取り組みにもつながっている。」と語る。

道明氏また、「当社が支援するこの事業は3か年に亘るもので、1年目は観光客の受け入れ態勢の整備を中心に行ってまいりました。マルチ決済サービスの導入をはじめて、観光情報コンテンツの準備をするというフェーズです。そして2年目の今年はこれを拡大していくフェーズということで、富良野エリアはもちろん近隣の美瑛や占冠などに広げていくことを進めております。また、2年目から3年目にかけては観光客の方により使っていただけるようなミニプログラムを増やしていくことを予定しております。」と今後の展望を語ってくれた。

インタセクト・コミュニケーションズでは、富良野市での取り組みで得られたノウハウや知見を、今後他の都市へも提案をしていくことを想定している。

(聞き手・執筆:デジタル行政 編集部 野下 智之)