山梨県が収量予測AIの実証実験を開始
山梨県は、AIとロボットを活用したスマート農業パッケージを提供するAGRIST株式会社(本社:宮崎県児湯郡新富町、以下AGRIST)および、NIPPON EXPRESS ホールディングスの農業法人子会社であるNXアグリグロウ株式会社(所在:山梨県北杜市、以下NXアグリグロウ)と協力し、農産物収量予測の実証実験を開始した。
本実証実験は、山梨県が推進する「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」に採択されたプロジェクトである。農場に設置した環境センサーによる温度・湿度・日射量・CO2濃度などのセンシングデータと、カメラによる農作物の画像解析データをクラウド上で集約・解析し、AIによる収量予測を行う。この技術により、2週間程度先の収穫量を高精度で予測し、農産物の出荷予測精度向上、物流の最適化、フードロス削減を実現することを目指している。
TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業とは
山梨県はリニア中央新幹線の開業を見据え、国内外の人々に選ばれる地域となることを目標としている。令和2年3月に「リニアやまなしビジョン」を策定し、最先端技術を活用したオープンプラットフォームとしての山梨県の発展を掲げた。その一環として、令和3年度より「TRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業」を実施し、最先端技術やサービスを有するスタートアップ企業などの社会実証プロジェクトを全面的に支援している。
背景
本実証実験を進めるにあたり、山梨県は収穫サイクルが短い葉物野菜を生産する農業法人を探し、北杜市で葉物野菜を栽培するNXアグリグロウの協力を得ることができた。
NXアグリグロウでは気温や天候などの影響で週間収穫量が出荷計画量を下回る場合、翌週収穫分の「前倒し収穫」を実施せざるを得ない。しかし、「前倒し収穫」が拡大・長期化すると収量の減少につながり、契約栽培において出荷計画との乖離が大きな課題となる。本実証実験ではAIを用いた高精度な収量予測により、最適な出荷計画を立案し、物流課題や農業の持続可能性向上に貢献することを目的としている。
実証実験の内容

本実証実験ではAGRISTのAI技術を活用し、NXアグリグロウの葉物野菜生産において高精度な収量予測システムを構築する。これにより、山梨県の農業発展に寄与することを目指している。
- 環境センサーおよびカメラを設置し、温度・湿度・日射量・CO2濃度などのデータと農作物の画像データを収集
- AGRISTのAI技術により収集データを解析し、2週間先の収穫量を予測
- 予測データに基づいた出荷計画の立案および物流の最適化
今後の展望

本実証実験を通じて得られた知見を活かし、山梨県はAGRISTおよびNXアグリグロウとともにより高精度な収量予測システムの開発を推進する。また、山梨県内にとどまらず、全国の農家への技術展開を視野に入れ、収量予測データと市場価格データの連携による収益性の高い農業経営支援システムの構築を目指している。
(執筆:デジタル行政 編集部)