「e街プラットフォーム」で100年続く地域経済の循環を―ギフティが手掛ける2つの自治体向けサービス[インタビュー前編]

「e街プラットフォーム」で100年続く地域経済の循環を―ギフティが手掛ける2つの自治体向けサービス[インタビュー前編]

eギフトプラットフォーム事業を営む株式会社ギフティ。企業からエンドユーザーへの景品や、知人・友人間で送りあうものというイメージの強いeギフトだが、同社では自治体向けサービスにも注力している。

その中の1つである「e街プラットフォーム」サービスを通した「地域通貨」や「旅先納税」とはいかなるソリューションなのか。「地域内で経済が循環する仕組みになっている」というe街プラットフォームの全容について、株式会社ギフティ 常務執行役員第四事業本部長 森 悟朗氏にお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 渡辺 龍)



全国で初めて地域通貨サービスを電子化したギフティ

―ギフティの事業概要についてご紹介ください

当社はeギフトというプロダクトを主力商品としてビジネスを展開している会社になります。様々な商品をURL化し、LINEやメールでeギフトとして送付することで、受け取った方はお近くのカフェやコンビニで商品と引き換えることができます。こちらを事業の核としつつ、近年では自治体様向けのソリューションも展開しています。その1つが「e街プラットフォーム」です。これは従来の全国チェーンで使えるeギフトではなく、特定の地域の中で消費が回るように形を変えて自治体様に提供しているものです。

―e街プラットフォームはどのような形で自治体に使われているのでしょうか

1つは「地域通貨」として、発行者が指定したお店でのみ利用できる電子通貨や電子商品券をご用意しています。「地域が限定される」、「有効期限も決められる」、「使える業種も特定できる」といった特徴があり、利用地域の制限を設けることで、地域内で経済が循環するような仕組みとなっています。

また、最近引き合いの多いサービスとして「旅先納税」という、旅行前・旅行先で簡単にふるさと納税を行えるシステムも提供しています。こちらは寄附した方に30%相当(自治体により異なるケースも有)の電子商品券を返礼品として発行します。

―なぜ自治体向けにサービスを提供しはじめたのでしょうか

元々は「Welcome ! STAMP」というサービスがe街プラットフォームの前身になるのですが、当時私は、紙の商品券を扱う会社の社長を務めていました。そこで市場をリサーチする中で、紙の商品券市場が今後縮小するのに対し、eギフト市場は大きく伸びていくというレポートを目にしました。マーケットが沈む側にいるのが寂しく、レポートの執筆者経由で「eギフト市場の一番面白い会社の社長に話を聞きたい」ということで会ったのがギフティ代表の太田と鈴木でした。

その後、長崎出張の折に数億円分の紙の商品券が山積みになっている光景を目の当たりにしました。この大量の商品券を配送、処理することを考えるとその煩雑さに圧倒されると共に、ギフティの技術を活用できれば地域商品券の電子化が実現できるのではないかと感じました。最終的には長崎県庁ご出身の地域通貨運営事務局長様のご理解とご協力もあり、ギフティと当時私が務めていた会社2社での共同提供という形で、長崎の離島で使える地域通貨サービスを全国で初めて電子化するに至りました。

―高齢者が営む個人商店などは新たなソリューションに不慣れというイメージもあります。そういった方にも長崎での電子通貨は受け入れられたのでしょうか

当時は二次元コード決済も世にほとんど出ていなかったので、おっしゃる通り高齢の方でも使えるソリューションでないと受け入れていただけません。そこで電子スタンプという技術を活用し、宅配便をハンコ1つで受け取るのと変わらない形のソリューションを整えていました。スマホの画面に静電気で動作する物理的なスタンプをポンと押すだけで、電子通貨の決済・消し込み作業が完了するもので、その簡易さがサービス拡大に繋がりました。

資料提供:株式会社ギフティ

インバウンド需要の拡大で訪日観光客もサービス対象に

―その後、e街プラットフォームの導入拡大までは順調だったのでしょうか

2020年1月にコロナに見舞われ我々のサービス導入も止まっていたのですが、非接触・非対面といった言葉がキーワードになった辺りから、紙の券を配るのはよくないという温度感の世の中になりました。そこでいち早く前橋市様や秋田県様から電子商品券という形で我々のサービスを採用いただきました。その事実を報道等で知った他の自治体様からの問い合わせも増え、最終的に2020年のGo To トラベルキャンペーンにおいて、47都道府県全ての地域共通クーポンの電子運用を当社が引き受けることになりました。それからは内閣府の地方創生交付金を活用した地域振興施策として、多くの自治体様が積極的に活用していこうという機運が生まれて今に繋がっています。

―旅先納税の引き合いが多いというお話もありました。インバウンドも含めた観光需要は今後さらに拡大していく見通しなのでしょうか

将来的に日本の人口は減少していきますが、日本の文化的価値は引き続き力強いものがあり、特にインバウンド需要は高まっていくと信じています。その時に訪日客に使ってもらいやすいチケットやクーポンを揃えていければ、日本の観光に付加価値を生んでいくことに繋がります。私たちのソリューションを自治体様と訪日客それぞれに適した形でどうフィットさせていくかというのは今後のテーマの1つです。

既に山口県宇部市様と福岡県北九州市様など一部では取り組みが進んでおり、宇部市様のホテルに泊まった訪日客向けに街中で使えるインバウンドクーポンを配布しています。同じく北九州市様では、アンケートに答えてくれた訪日客に5000円分のクーポンを配っています。2025年には大阪・関西万博が控えており2000万人を誘客目標とすると言われています。万博の後には富士山や金閣寺などの著名な訪問先のみならず日本全国の素晴らしい文化に触れる機会も創出できると考えています。日本全国の素晴らしい文化と訪日客をうまく繋ぐ役割が当社でできればさらに価値のある事業に発展していくと思っていす。

一過性の事業にするつもりはない

―小規模自治体にとって予算は常に悩みの種です。大規模自治体でなくてもe街プラットフォームは上手く活用できるのでしょうか

導入自治体様の中には1500人規模の本当に小さな村もあり、予算の多寡は関係ありません。それよりも、「やる気のある自治体様でないと前に進みません」ということはいつも正直にお話させていただいています。大きな自治体様でも、仮に予算を消費するためだけに当社のシステムを採用いただいたとしたら、それでは社会の価値は生まれません。

また、私たちとしてもe街プラットフォームが一過性の事業に採用され、1億円の売上になったのでそれで良しという事業にはしたくありません。それよりも年間100万円で100年使っていただくことを目指しています。戦略性や覚悟を持った自治体様からのご相談があれば、その熱に応える形でぜひサポートさせていただきたいと常に思っています。

―競合もいる中で自治体への導入が拡大している要因はどこにあるのでしょうか

プロダクトアウトにはならず、マーケットインで寄り添っていくことは念頭に置いています。今ではこの領域でのサービス提供者は多数いるのですが、それでも当社にオーダーをいただけているのは他社に先行している技術面だけでなく、これまでの経験や自治体様との向き合い方も影響しているのではないかと思います。

特にGo To トラベルは大きな転機となっており、全国一律のサービスを数年に渡ってきちんと提供した企業は当社以外にはなかなかありません。ギフティと言う会社は耳馴染みがなくても「Go To トラベルの運用基盤を担っていた企業」ということで自治体様から発注をいただくことも多いです。1つ1つのお取引を誠実にやって大きなエラーを出さずに自治体様に寄り添う姿勢を信頼していただいているのだとしたら嬉しい限りです。

後編に続く