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寄付がつなぐ企業と自治体。共に地域課題を解決する-企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式イベントレポート

寄付がつなぐ企業と自治体。共に地域課題を解決する-企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式イベントレポート

2026年1月16日、内閣府主催による「企業版ふるさと納税に係る大臣表彰式」が、東京都港区で開催された。本表彰式は、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の活用促進を目的に、制度を通じて顕著な成果を上げ、模範となる取り組みを実施した自治体および企業を表彰するものである。平成30年度から毎年度実施されており、今年度も全国から注目を集める事例が選ばれた。


令和7年度受賞団体

【地方公共団体部門】

静岡県伊豆市、愛知県豊田市、三重県四日市市、鳥取県日南町

【企業部門】

アサヒビール株式会社、ジー・オー・ピー株式会社、寿精版印刷株式会社

黄川田 仁志 内閣府特命担当大臣による表彰状授与に続き、企業版ふるさと納税マッチングアドバイザーによる制度説明、受賞団体による事例発表、選考委員による講評が行われた。
企業版ふるさと納税を、地域課題の解決に取り組むツールとしてどう活用していくのか。受賞団体の事例からその方法を紐解く。

伊豆市:教育と防災を横断した創生モデル

伊豆市は「災害死者ゼロ」を掲げ、防災と教育を横断した政策展開を進めている。市内3中学校を統合して2025年4月に開校した伊豆中学校を拠点に、慶應義塾大学SFC研究所と連携したXR防災教育を実施している。大学の知見を生かしたAR・VRといった先端技術を活用した防災教育を中学校教育に組み込むことで、生徒が主体的に災害リスクを考え、判断力や課題解決力を養うことが狙いとなる。

本事業では、企業版ふるさと納税を活用してVRゴーグルといったデジタル端末を整備したことで、中学生自らがAR・VRの素材となる素材を撮影し作成するという学習モデルを実現している。デジタル端末を装着して、防災訓練を体験することも可能となる。登壇した伊豆市市長 菊地氏は、今後もICTを活用した防災戦略と連動し、「防災×地方創生」の新しい形を全国に発信していきたいと意気込みを語った。

豊田市:森林地域における地域課題の解決

豊田市は、市の約7割を占める森林地域における高齢者の移動課題に着目し、超小型電気自動車を活用した「里モビLIFEプロジェクト」を展開している。企業版ふるさと納税を活用し、企業・名古屋大学・地元団体が連携し、事業検討から車両の管理・改造から運営までを一体的に設計した。

高齢者に貸し出しされる超小型電気自動車は、通常の車よりも安全性が高く、免許返納を高齢者にせまる必要がなくなる。この取り組みは、移動支援のみならず、高齢者の外出を促進することで地域コミュニティの活性化や健康寿命の増進にも寄与している。

四日市市:ゼロカーボンシティを目指した環境政策

一方、四日市市は、四日市公害の経験を背景に、環境先進都市としてゼロカーボンシティを宣言している。今回受賞した事例では、コスモ石油株式会社の企業版ふるさと納税の寄付を活用し、市内路線バスのEV化を実現。市内に工場を持つ企業、交通事業者、市が連携し、脱炭素施策を実装した。公害を経験した都市ならではの環境対策が、都市イメージの向上につながっているとして評価された。

日南町:寄付効果を数値とした持続可能な林業

鳥取県日南町は、町の約9割を森林が占めており、さらに町民の55%が高齢者であることもあり、森林資源の管理に課題を抱えてきた。林業において柱となる循環型林業の実現を目指し、皆伐・植林・下刈り・間伐等を計画的に行う取組で企業版ふるさと納税を活用している。寄付企業の社員が研修として森林整備に参加するなど、人材育成や森林教育を通じて、次世代につながる基盤づくりが評価された。

日南町では、寄付額に応じた効果を数値で示す「見える化」を重視。例えば、寄付額100万円では、植栽面積(植樹できる面積)だと約1ヘクタール、約3000本の植樹が可能、といった具体的な数値を示すことで、企業側の脱炭素目標とつなげて見せる工夫をしている。「企業と自治体が共同で地域価値を創出する」という目標をかかげ、継続的な寄付と関係構築に取り組んでいる。

企業部門:企業の強みを活かした地域との協働関係

企業部門では、各社が自社の技術・価値観を地域課題解決に結びつけた事例を発表した。

アサヒビール株式会社は、サステナビリティ基本方針に基づき「祭り・花火の支援」「食文化の継承」をテーマに全国公募型の寄付を実施。さらに、アルコールと人の良い関係を促進する「スマートドリンク」のテーマでも同様の寄付取り組みを進めている。

ジー・オー・ピー株式会社は、建設用機材の開発・製造・レンタル・販売といった建設現場での作業環境を支える事業を展開している。強みである若手育成や女性活躍、技術開発を活かし、東日本大震災をきっかけに宮城県の地域課題解決への貢献を目指している。防災や農業分野を中心に、田んぼダムの普及や「女性農業者のための農業機械セミナー」といった人材育成などの支援を展開してきた。

寿精版印刷株式会社は、福井県越前市の越前和紙の技術継承と産地振興を支援。越前和紙の伝統を用いて、国際的な人気を誇る日本産ウイスキーのラベルを作成し、国内外に越前和紙の魅力を伝えてきた。寄付金で越前和紙の拠点施設の整備や、ユネスコ無形文化遺産への追加登録を目指す活動を行うなど、文化資源の魅力発信に貢献している。

各受賞事例の発表後、選考委員からコメントが寄せられ、「明確な政策ビジョンを提示している点」「自治体と企業が対等なパートナーとして関係を構築している点」「成果や価値を可視化し、関係人口の創出につなげている点」が共通して高く評価されたとのことであった。

本表彰式で示された7つの事例は、企業版ふるさと納税が税制上の優遇措置のみならず、地域を活性化するための政策ツールとなり得るということを実証した。今後も自治体と企業の良い関係が築かれ、地域課題の解決につながる活用が増えることが期待される。