ドコモショップから見えるデジタルデバイド問題の実態 -後編- [インタビュー]

ドコモショップから見えるデジタルデバイド問題の実態 -後編- [インタビュー]

前編ではドコモショップ丸の内店、現地の様子を紹介した。ドコモショップはNTTドコモが他企業と代理店契約を提携し、運営されていることはよく知られているところだ。一方で当然のことながら施策展開のための中枢機能はNTTドコモ内にある。「スマホ教室」を運営するNTTドコモ営業本部チャネルビジネス部中島伸悟氏(写真左)、田口弘毅氏(写真右)に話を聞いた。

聞き手:デジタル行政 編集部 横山 優二

――NTTドコモの「スマホ教室」の受講数など、実績を教えてください。
中島氏 「スマホ教室」は国内に約2300店舗あるドコモショップ全店で開催されており、年間約350万名のお客様に受講いただいています。いわゆるガラケーからスマホに変更される際や、使い方についてお問い合わせを受けた際に受講をお勧めさせていただきます。受講者の約90%が60歳以上のシニア世代であり、多くが電源のオン・オフや文字入力など基礎的なレクチャーである「基礎編」「入門編」という講座を受講します。以前は「電話教室」という名称で、1対1や小規模な形式で行われていましたが、スマホ利用のニーズが高まり、より便利に楽しく使っていただきたいというコンセプトから、2018年1月より「スマホ教室」という名称に変更しました。

――教室運営に課題や難しさはありますか。
中島氏 全国どのドコモショップで参加されたお客様にも同水準のサービスを提供できるよう、講師のスキルの平準化が課題だと考えています。当然、テキストや講義内容は統一していますが、講師のマインドや対応力によってお客様の理解度が変わってきます。丁寧な社内研修や認定資格制度の設置を通してインストラクションスキルや講座進行のノウハウを高めるよう努めています。

――代理店との連携も重要になるのでは。
中島氏 代理店様とは月に1回程度、各店舗の店長や副店長とオンラインミーティングを行っています。スマホ教室運営は他のショップ運営業務とは性質が異なります。当会議ではスマホ教室のみにテーマをしぼり、課題や運営の変更点、今後の方向性などについてお伝えしています。

ドコモショップの店舗数は「最適化」する

22年5月頃、日経新聞をはじめとした有力紙らで「NTTドコモが全国約2300のドコモショップの3割にあたる約700店を閉鎖する」という報道が流れた。注目すべきはその表現だ。どの媒体でも「方針を固めた」「見通しを立てていることがわかった」など、情報ソースを明らかにしていない。プレスリリースで発表されたのであれば「公表された」と書かれるであろう。また、社長のインタビューで話された内容であれば「〇〇への取材で明かした」などと書けばよいが、いずれもそうした表現はされていない。

――スマホ教室の運営は企業にとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
田口氏 実際に使用感を試していただくことでスマホへの切り換えを促進する効果があると考えています。多くのお客様がスマホを購入してからスマホ教室を受講しますが、なかにはスマホ教室受講をきっかけにスマホをご購入いただくケースもあります。また、ドコモは21年4月に株式会社メドレーと資本・業務提携を締結し、スマホ教室で同社サービスであるオンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」の利用案内を開始しました。より利便性の高いサービスを目指して、企業間連携実現の場にもなっているのです。

――複数の媒体でドコモショップが閉鎖される方針が報じられています。
田口氏 NTTドコモとして正式にそうした方針を発表したという事実はありません。決算説明会や個別の取材のなかで出た「オンラインでの手続きが3割程度増えている」といった発言が、「店舗の3割閉鎖」という形で報道されてしまったのではないでしょうか。お客様のニーズに合わせてチャネルの在り方を見直し、オンラインとオフラインの配分を変化させていくことが重要であると考えており、減らすことを念頭に置いているわけではありません。

デジタルデバイドとドコモのOMO戦略

21年10月に発表されたNTTドコモの中期経営計画を見てみよう。そこには「通信事業」の方針として「OMO UX刷新」という言葉が出てくる。OMOとは「Online Merges with Offline」の略で、オンラインとオフラインを組み合わせたマーケティング戦略のことを指す。刻々と進む高齢化、そしてそれ以上のスピードで発展していくネット、SNS勃興の時代にあって、同社がふたつの最適なバランスを模索していることがよくわかる。

――今後、ドコモショップの位置づけはどのように変化するのでしょうか。
中島氏 スマホが一定程度普及してから、端末購入のサイクルは長期化しています。また、社会のデジタル化や新型コロナウイルス感染症の影響からオンライン手続きが増加し、ドコモショップの来店者数が以前と比較して減少傾向にあることは確かです。今後の我々のショップミッションはリアルチャネルとデジタルチャネルを組み合わせてハイブリットチャネルへと変化し、お客様のコンサルティングを行っていくことです。例えば対面での商品説明やオンラインで注文した商品の店頭受け取りなどのニーズは今後もあります。こうした取り組みを通してドコモショップを愛していただき、共感を持っていただきたいというのがドコモの思いです。

――デジタルデバイドという社会問題に対してどのように向き合いますか。
中島氏 “デジタル”を知らずに取り残されてしまう、苦手で取り残されてしまう、という方が多くいる現状に大きな課題を感じています。我々の提供しているスマホ教室をきっかけに「便利さ」を知っていただき、より生活を豊かにしていただきたいです。NTTドコモは社会課題解消のため、お客様の生活を豊かにするため、様々な施策を積極的に取り組みたいと考えています。