長野県信濃町 ヤフーのビッグデータ活用でふるさと納税の寄付額を前年比1.9倍に!

長野県信濃町 ヤフーのビッグデータ活用でふるさと納税の寄付額を前年比1.9倍に!

※写真左から まちづくり企画係 服部氏、地域おこし協力隊 吉村氏

ヤフー・データソリューションのサービス「DS.INSIGHT」は、ヤフーのビッグデータを簡単に活用できるリサーチツールで、自治体においても活用されている。

長野県信濃町ではふるさと納税の分野でDS.INSIGHTを活用し、前年比1.9倍の寄付金額となった。
担当された長野県信濃町役場総務課まちづくり企画係の取り組みを紹介する。

記事提供:ヤフー株式会社

「寄付者のニーズ」と「地域の魅力」を定量的に、客観的に理解する

信濃町では、地元を離れて暮らしている方、信濃町に魅力を感じていただける方など、「ふるさとを応援したい」「ふるさとに恩返しをしたい」などの気持ちからの寄附をまちづくりにいかし、「ふるさと信濃町応援寄附金」を創設している。

その中で、より多くの方に町の魅力を感じてもらい、寄付を増やしていくために、町役場自身が町の魅力や寄付者のニーズをもっと理解すべきと考えた。

その方策として、“地元にいるからこそ気付かないことを、データを活用して客観的に理解できるのでは”という仮説を立て、ヤフーのビッグデータが活用できるDS.INSIGHTを採用した。

地元の強みを知るためには、世の中のトレンド理解も必要

調査の方法は、ヤフー担当と相談しながら、検索データから「ふるさと納税のトレンド」「地域の強み」「ライフスタイルのトレンド」の現状把握をするとした。

ポイントは、いきなり信濃町の観光地や物産の調査に入るのでなく、“ふるさと納税のトレンド”や世の中の“ライフスタイルのトレンド”を把握することも調査対象に入れたことだ。

理由は、2021年度は新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、世の中の暮らしに対する要望も大きく変化している中で、返礼品のトレンドだけを調べても量やお得感での競争となるだけで、寄付者の背景を理解できなければ、町独自の魅力的な対応はできないからである。

なお、調査は21年度に反映できそうな短期施策と、それ以降に検討できる長期施策を分けることとし、なるべく多くの可能性を調査した。

「ふるさと納税のトレンド」調査結果

「ふるさと納税」の検索トレンドは、総務省の発表するふるさと納税の寄付金額と強い相関があることが確認できた。これにより、検索ボリュームがふるさと納税の需要とある程度関連している前提で調査を行った。

あわせて「ふるさと納税」と一緒に検索されている返礼品名についての調査し、返礼品によって検索ボリュームが、季節や性別、年齢による傾向があることが確認できた。

「地域の強み」調査

信濃町や信濃町が持つ特産品や観光名所、アクティビティについての認知とニーズを検索データから把握した。

具体的には、街の強みとなる対象キーワードをリストし、検索の傾向を調査した。

下図は、「信濃町」「信州そば」「野尻湖」「ナウマンゾウ」などのキーワードの検索ボリューム推移や都道府県での検索ボリュームの特徴度を把握したものだ。

夏と冬では明らかに関心が違い季節に応じた対応が必要なことや、長野県の近郊で関心が高いもの全国的に認知があるものがあることなどが確認でき、PRのやり方にも示唆があった。

キーワードの選定の工夫

キーワードの選定は工夫している。例えば地元の施設など検索があまりされていない場合は、それは重要な事実として捉えた。その上で、関連するキーワードの検索動向を調査した。

例えば、特産品である「信濃そば」についても、「そば」「そば粉」「そばの実」などのキーワードで調査した。その結果、「そば粉」であれば、女性にはお菓子作りのニーズがあり、「そばの実」は健康志向のニーズがあることが確認できた。

こういった結果が、産品の魅力発信の可能性を知るのに役立った。

「ライフスタイルのトレンドの把握」調査

前述の通り、ふるさと納税は信濃町に愛着を感じていただく方を増やす事業であり、その関係を発展させるためには、信濃町のことだけでなく、世の中の関心に寄り添った対応をすることが重要である。

そこで、コロナ禍において生活様式が変化するなかで、「食」「生活」「野外などのアクティビティの興味」のトレンドについて調査した。
下図は、“グランピング”と一緒に検索されるキーワードだが、コロナ禍でも関心が年々増えており、ペット連れのニーズなどが確認できる。

チーム内のアイデアの創発

本対応の副次的な効果として、調査したデータを見ることで、個々のアイデアの掛け合わせた、たくさんの意見が出るようになったそうだ。
もともと町に愛着のある職員なため、それぞれの関心と合わせた新規の産品開発などのアイデアが出た。
しかしながら前述の通り、2021年度の施策としては時間が限られており、本年度の対応は、「返礼品の説明や写真をニーズにあわせて見直すこと」と「ニーズにあわせて既存の返礼品に簡単な変更を加える」ことの二つに絞った。

「生そば」の年末発送保証で麺類発注は前年比約2.5倍へ!

信濃町の特産品であるそばは、ふるさと納税返礼品としては生麺より乾麺の人気が高い状況だった。
乾麺は日持ちするため歓迎されていると推測したが、下図の通り実際「生そば」という検索と一緒に「賞味期限」を検索することが多いことを確認した。

また、都道府県別の傾向として、12月に東日本の方は“そば”より“生そば”という検索を特徴的に行う傾向があり、生そば需要があると考えた。

そこで信濃町の魅力を知っていただくため、美味しい生麺を楽しんでもらう方法を検討、年越しそばの需要が高まる12/28に発送保証する生そばを返礼品にしたところ、麺類全体で前年比約2.5倍の寄付を受ける結果となった。

寄付者のニーズに応える発信で寄附金額が前年比1.9倍へ!

その他、返礼品のおいしさや背景を伝えるため、寄付者の関心を理解し、ニーズにあわせて説明文や写真を見直している。
例えば、特産品の「とうもろこし」は「ゆで方」への関心が¬とても高く、美味しいゆで方をYouTubeに掲載し、ふるさと納税サイトにもリンクを設置した。

また、地元の無農薬の素材で作られたアロマキャンドルの返礼品では、検索データでアロマキャンドルの人気のある香りを調査し、出品事業者の方々に協力を受け商品の展開に活かした。

このような返礼品の追加や見直し、ふるさと納税サイトの写真や文章の見直しなどを進めることで、昨年度と比べて信濃町についての寄附金額は、全体で1.9倍となった。

EBPMで高まった意識とチームワーク

本取り組み前後の変化として、服部氏からは、“データを活用して、職員の意識が高まり、意見やアイデアを交わす機会が増えました。チームワークにもつながったように思います。”というコメントがあった。
データを共通理解として参考にしながら、地域への想いやアイデアをやりとりすることで、現場が活気づく。 EBPMが自治体に浸透する一つの形ではないかと感じた。

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