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働き方とデジタル化の課題と希望 河野大臣と平井大臣、オープン対話

働き方とデジタル化の課題と希望 河野大臣と平井大臣、オープン対話

 11月16日、河野太郎、規制改革・行政改革担当大臣と平井卓也、デジタル改革担当大臣が、オープン対話を行った。一般社団法人日本IT団体連盟代表理事兼会長の川邊健太郎氏が司会を担当した。2021年秋を目途に新設予定のデジタル庁とその取り組み、また霞ヶ関と自治体の職員たちの働き方が主な議題だ。
 対話の模様はYouTubeにて中継されるリモートオープン対話形式をとり、ツイッターなどに書き込まれる視聴者からの質問に両大臣が答える場面もあった。
 ディスカッションはおよそ1時間行われ、行政のデジタル化を中心に様々な重要トピックが話し合われた。その一部、印象的だった部分をここでご紹介したい。

働き方を整理してからデジタル化へ

 行政の業務をデジタル化していくにあたり様々な障壁があるが、そのひとつは話題になっているハンコ・押印の必要な書類である。本当にハンコは必要なのか、どこまで押印は必要なのか、まず河野大臣がこの点に答えている。

 河野:民から官にする手続きでハンコを押さなければならないものがたくさんある。全部でいくつあるか数えたら1万4992種類の手続きがあった。
 しかし、河野という印鑑をどこで誰が買ってきて押印してしまうともかぎらない。河野と書いてあるから河野さんが押印したとは必ずしも証明できない。
 本人確認ができない認め印のような意味をなさないものはやめにしようと、各省庁に見直しをお願いした。すると、1万4992種類の手続きが83になった。ハンコを辞めた手続きに関しては、少なくとも書類をうちだす必要がなくなったため、オンライン上で手続きができる。
書面を対面で持ってきてください、というものに関しては、全部その必要を確認してもらっている。そういったものはみんなデジタル化の対象になり得る。登録印の必要な書類でも、手続き自体がそもそも必要ない、ということで廃止したものもある。

 

人がやらなくていいものは、ロボットやAIにどんどん置き換えて‪いって、温もりが必要なところに人手をかけられるように寄せていく、そういう目的のもとにやっているのだ、ということを国民の皆様と共有しながら進めていきたい。ただ、便利にすればいい、というものではない。‬‬‬‬

 平井:‬私と河野大臣の立場はコインの裏表のようなもの。まず、ある程度意味のない行政業務を整理したうえでデジタル化をはかる必要がある。
これまでの行政サービスは、行政を提供する側の論理が強すぎて、確実に間違わないようにやる、というところを重視してきたが、国民側から見ると、各省庁バラバラにそういうものを提供されても、どの省庁にどんなサービスがあるか、なんてことを熟知している国民はいない。困っているときに手続きができればいい。


平井卓也 デジタル改革担当大臣

 マイナンバー、マイナンバーカード、マイナンバーポータルと続く一連の流れ、デジタル化の流れにおいて、自分が自分であるということを証明することが非常に重要である。日本はこれまでそれなしにデジタル化を進めてきた。まずIDを確立してもらう、ということが基本中の基本である。それぞれの人たちが自分の情報を自分で管理する社会を望んでいると我々は考えていて、そうなるとマイナーポータルを自分用にどうカスタマイズしていくか、ということが今後非常に重要になっていく。

仕事がくだらなくて転職する官僚たち

 

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河野太郎 規制改革・行政改革担当大臣

話題は霞ヶ関の働き方にもおよんだ。

 河野:霞が関で働きたいと思う人の数が、ピークが1996年、今やそのときと比べると半減している。給料は安いけれど霞が関で働こうと思った人の7人に1人はもうやめる用意をしている。ひとつには労働時間が長すぎてプライベートライフと仕事が両立していない。あるいは、家庭・家族と仕事が両立していない。
 また国のためにと思って来てみたけれど、やらされている仕事があまりにくだらなくて、これを続けていっても人間的に成長しないなと、もっと人間的に成長できる仕事に移りたいという理由がある。

 霞ヶ関のブラック化というのは昔から言われているが、どれだけブラックか、ということをきちんと数字でデータで見なければいけない。そこで、10月11月とどれだけあなたは役所にいましたか、という在庁時間を調べてもらっている。これで、どれだけブラックか、ということが分かる。それに対して、原因を追究して、もっと短くするためにどうしたらいいのか、それと、やり甲斐のある仕事をしたいと思って来ているわけだから、どうやったらそれが実現できるのか、ということを若い人に考えてもらわないといけない。
 何が問題で、どこをどう変えたら自分たちが思い描いていた霞ヶ関の働き方になるんだろうか、という提案をどんどん出していただきたいと考えている。

 国会議員の働き方のデジタル化ではこんなエピソードも出た。

 河野:なかなか行政府から立法府にああしろ、こうしろとは言えない。たとえば自民党は毎朝8時から法案の審議をやり、政策の議論をする部会をやっている。これまでは8時の部会に間に合うように、たとえば資料を100部コピーして届けるという業務があった。
 コピーしているうちに資料を差し替える部分が出ると、全てやり直さなければならない。これを下村政調会長にお願いして、みんなにタブレットを配り資料を電子で届けさせてくださいと、そうしたらいくらでも資料を差し替えればいいし、コピーしてホッチキスで止めて、という作業も必要なくなるし、若い職員がそれを台車に載せてゴロゴロということも無くなる。

 今度はみんながタブレットを持つようになったら、国会議員に〇〇について説明してくれと言われるときに、今までは霞ヶ関から永田町まで行って、場合によっては議員会館の廊下で待っている、という業務があったけれど、タブレットを持ってるんだったらオンラインでやらしてくださいと、そうすると両方の時間が合えばその場でスタートできる、あるいは、5人から同じことを説明しろと言われたら、じゃあ午後3時からどうですか、といって一発で説明ができてしまう、そうするとだいぶ霞ヶ関の働き方も変えられる。こうすると国会議員は選挙区からオンラインで参加も可能になる。

デジタル庁には民間の力も

 新設のデジタル庁では、公務員以外の人材からの参画も予定している。

 平井:今までの霞ヶ関の悪い組織文化と決別した新しい省庁をつくる、ということで、官民両方協力して、地方に住んでいてもデジタル調で働けるようにしたいと考えている。デジタル化を進める役所だから、自ら新しいデジタルワーキングスタイルを作り上げていく、ということが重要だと思う。
 働き方も、評価の仕方も変わっていくだろうし、完全に雇用する形態と、兼務で能力を提供してもらう、プロジェクトごとに参加してもらう。いろいろな形で柔軟にしたいと考えている。そして地方の職員の皆様も、デジタル庁というのはまったく関係ないところではなく、好きに来ていただけるところにしたいと思う。デジタル化を進めるという話は、国だけでも地方だけでも、民間だけでも完結しない。

 そういう意味では、まったく今までとは違うデジタルの働き方、それぞれが能力を出し合う姿を我々が作っていかなきゃいけない、というふうに思っています。それで、もう既に民間の方々にも協力していただいているんですけれど、まさにデジタル庁って私がスローガンに掲げたとおり、スタートアップ企業と同じで、だから、Goverment as a Startupっていう、これがGAASになるんで、多少バズったりはしましたけれど、Goverment as a Serviceを目指している。

ジップファイルはあまり意味なかった

 10月15日に設置された、内閣官房デジタル改革担当が運用するデジタル化推進に関する国民の意見募集サイト「デジタル改革アイデアボックス」には、すでに3600(11月16日 時点)を超えるアイデアが集まり、そのアイデアに対して1万を超えるコメントが寄せられているという。
 中でも最も多かったのが、ジップファイルに関する意見だ。行政スタッフは資料を添付する時に、それをジップファイル化して、パスワードを付与し、そのパスワードを新しいメールで伝えるという手間をかけてきた。

 平井:ジップファイルの廃止というのは、これは廃止した方がいい。役所間でもメールを開けられなかったりする。暗号化されたメールで、パスワードを違うメールで送ったりしている。これはセキュリティーレベルの話ではなくて、ハンコを押すのとよく似ている。そのやり方を今までやってきたからみんなやっているという。
 スマホで見れないのは致命傷で、何のためにそれをやっているかというと、セキュリティーのためではない。パスワードの扱いからいっても、本当のセキュリティーのためではない。なんとなく形から入っている。もっと本質的にいったい何が重要なのか、書類だってセキュリティーレベルはいろいろある。それを全部同じように扱う。何でもかんでもハンコを押していたのと、どの書類も同じように扱うっていうのは、だいたい同じ感覚なんですよ。

セキュリティー重視でテレワークで機能不全に

 コロナ禍で行政職員の仕事にもテレワークの機会が増えたが、仕事に大きく支障が出ているようだ。

 河野:たとえば霞ヶ関は緊急事態宣言の後、半分ずつ出社しようと言ったが、在宅勤務はほとんど自宅待機と化していて、防衛相はセキュリティーの問題があるので端末が足らないと、もうほとんど自宅で研鑽を積む、みたいなことになってしまい、そういうことに関しては霞ヶ関、そうとう変えていかないと、と思っている。

 平井:5月の緊急事態宣言のときに、私はまだ大臣ではなくて党の立場だったけれど、本当に数えきれないほどWeb会議やった。派閥の会合も全部Webでやった。普段、政治家というのは人の話を聞いているようで聞いていないけれど、ウェブになるとちゃんと聞く。その分疲れちゃったりするんですけれど。私は国会議員のなかでデジタルデバイドってすごくあるのかな、って思ったら、いざやってみたらみんなできた、っていう体験があるので、急に皆さんウェブ会議が好きになっている。

 対話の後半で平井大臣はデジタル化に関してこうも語っている。

 平井:今までの失敗は、ただ、今やっている仕事を一部デジタルに置き変えたら、デジタル化をしているような気分になっている人たちが多すぎた。つまり、中途半端なデジタル化が多いために、こないだの特別定額給付金みたいにボロボロな状態になっちゃうわけです。これからは、エンドトゥーエンドで、ちゃんとやりきるというデジタル化が必要だと思っている。

(執筆:デジタル行政 編集部 長野 光)