最終目標は「行かない窓口」-山口県周南市が取り組むデジタル窓口業務

最終目標は「行かない窓口」-山口県周南市が取り組むデジタル窓口業務

株式会社松阪電子計算センター、株式会社日立ソリューションズ西日本、株式会社日立システムズの3社は、山口県周南市においてスマートデバイスを活用した自治体窓口での申請や届出のデジタル化をめざす共同研究を6月から開始した。

共同研究の名称は「ICTを活用したデジタル行政窓口」、窓口業務や問い合わせ業務に関するアプリを作成し、住民のスマホやタブレットを利用することで、手書きで申請書に記入するというプロセスを電子化する試みだ。

最初のステップとして「書かない窓口」というものを実現し、最終的には来庁そのものを不要にする「行かない窓口」の実現をめざしている。

出典:株式会社日立システムズ

スマホで記入するとQRコード

住民票、印鑑の登録証明書といった申請で実証実験を行う。この2つの申請は、住民が役所で行う頻度が多い。実証実験を成功させ、自治体のさまざまなフォームを電子申請化していきたい。

実証実験の対象に選ばれた山口県周南市は、日立システムズが開発している日立 自治体ソリューション「ADWORLD」を長年利用してきた。これは住民情報に関する書類の作成や管理を行うためのソリューションで、今回の共同研究である「ICTを活用したデジタル行政窓口」は、ADWORLDとの連携により、デジタル化のメリットを発揮する。


住民がスマホ上で証明申請書を作成するとQRコードが作成され、役所の窓口でQRコードを提示すると、ADWORLDを通して申請のプロセスを進めることができる。

アプリを使うことで、住民側はこれまで役所の中でしか記入できなかった申請手続きを事前にいつでもどこでも行うことができるようになる。
役所の職員側からすれば、QRコードの読み込みによって対象者を検索する必要もなく、証明書作成が容易になる。

対面窓口は無くならない

「住民の申請と役所の職員の対応がそれぞれ楽になったと感じることができるかどうかがポイントになる」と日立システムズ、公共事業拡販推進本部、DZ推進部の細野久嘉氏は語る。

2040年問題など、自治体として多くの課題をかかえる中で、役所の職員の数が限られているため仕事はどんどん忙しくなる。窓口業務を始めさまざまな部分でデジタル化の需要は拡大してゆくはずだが、この技術を導入することで、これまでのアナログ式対面型の申請が消えてしまうわけではない。従来の対面式の窓口業務の必要性は今後も残ると同社は想定しており、デジタル化の申請でも、アナログ式対面型の申請でも、日立システムズは職員の負担を少しでも小さくなるように、バックオフィスなども活用しながら支援をしていく考えである。


株式会社日立システムズは、現在、周南市と実証実験の内容に関して打ち合わせを進めており、2021年1月より対象を絞った限定的な実証実験を開始する。その後、効果が認められれば、幅広い対象者に向けた実証実験を計画している。

また、本実証実験と合わせて、証明書申請問合せアプリ、ヘルスケアアプリ、学校給食献立配信アプリ等の開発を行っており、住民が知りたい情報を発信できるアプリを同時提供することで、住民の利便性を向上させ、「行かない窓口」を推進していきたい考えだ。

どこでも申請時代と本人確認という課題

前述のとおり、最終的には家で記入、申請、伝送までを行い、申請プロセスのデジタル化をめざすが、これを達成していくためには本人確認をどのように行うか、という課題があり、日立システムズでは複数の方法を検討している。
こうした技術の検討を重ね、最終目標である「行かない窓口」の実現をめざしていく。

(執筆:デジタル行政 編集部 長野 光)