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アバターと面接練習。長野県塩尻市の“受験者ファースト”な採用とは[インタビュー]

アバターと面接練習。長野県塩尻市の“受験者ファースト”な採用とは[インタビュー]

塩尻市役所 総務部総務人事課職員係の嵯峨将太さん


塩尻市ではかねてより、「受験者目線で考える受験しやすい環境」づくりに取り組んできた。採用手続きの完全オンライン化によって履歴書など手書きの書類を廃止したほか、マークシート形式の性格診断をやめ、録画動画のAI感情解析を導入している。
2025年度にトライしたのがAI面接だ。アバター面接官との面接はいかなるものか。受験生にとってメリットはあるのか。塩尻市役所 総務部総務人事課職員係の嵯峨将太さんに聞く。

(聞き手:デジタル行政 編集部 手柴史子)

筆記から動画によるAI解析へ移行

近年、塩尻市では15名から20名の採用人数を目標に掲げている。ここ7、8年の応募者数のピークは2020年度で300名に達し、その後緩やかに落ちつつも、例年200名程度を保っているという。職種は大学卒の事務、社会人経験ありの事務、保健師、管理栄養士、土木職、建築職などに細かく分けて募集を行っている。

2021年から取り入れているAIを活用した感情解析では、受験生にお題を出し、それに対する回答を1分程度の動画にまとめてもらい、申し込みフォームに添えて提出してもらう。「おかげで、市庁舎まで来て1時間の性格診断テストを受けてもらう必要がなくなりました」と嵯峨さん。

また、筆記よりも動画の方がストレス耐性を計りやすいのだという。行政では厳しい言葉をかけられることも少なくないが、そうした際のメンタルダウンはどうしても避けられない。AI解析でストレス耐性の数値がある程度明確に出るようになった、と嵯峨さんは評価した上で、「感情解析のみで合否を判定することはありません。あくまでも参考値で、指標の一つ。その日の受験生の気分によって表情は変わると思いますから」と強調する。

採用システムは、株式会社ZENKIGENのものを使用。動画解析ができるかに重きをおきつつ、申し込みから内定までをすべてシステム内で完結できるかも含めて検討した結果だという。

AI面接が面接スキル向上に寄与

アバター面接官が登場するAI面接

2025年度よりトライアルでスタートしたAI面接は、2026年度の採用試験より本格導入となる。効果検証の結果を受け、嵯峨さんは受験生のメリットの大きさを実感している。何回も面接練習として活用できる点がその一つだ。「練習のたびに面接結果がレポートとして通知されます。論理性、具体性、簡潔性といった項目があり、SからDの5段階評価とコメントを確認できるので、良かった点、改善したい点を知ることができます」

塩尻市の採用試験の流れは以下の通りだ。

・オンラインフォームで申し込み(1分程度の動画を添付)

・一次試験(学力試験)

・二次試験(対面面接:15分ずつ会場と面接官を変えて3回、総時間45分ほど)

 ※この前にAI面接の動画を提出

・三次試験(対面面接:回数は変動するものの複数回を実施)

トライアル時は一次試験と二次試験の間にAI面接を受け、納得できた1本を提出してもらったが、これからは申込完了メール送信の際にAI面接のURLを共有するという。応募完了から二次試験までの間で指定した期間内であれば、好きなだけ練習が可能だ。「応募いただいた全ての方に、AI面接を使えるようにしたいと考えています」

面接官側にもメリットがある。面接時間は15分と限られている上、対応しなければならない人数も多い。それぞれが何に取り組んできたのか、強みはどこなのか、事前にAI面接で確認しておけば突っ込んだ質問ができ、受験生をより深く知ることができる。「質の高い採用試験が実現できるはずです」と嵯峨さんは期待する。 AI面接の内容は文字起こしもされるため、「情報をしっかりと頭に入れて面接に臨める」といった声が上がっている。 応募者側からも、「最初は戸惑ったが、面接の良し悪しが分かりやすく、スキル向上にもつながった」、「頭の中を整理するのに非常に役に立った」などのコメントが聞かれた。

最速最先端の地方公務員採用

塩尻市役所外観

2020年度に応募者数が300名を超えた理由は、コロナ禍に突入したことにあると嵯峨さんは分析する。「社会の不透明感と不景気が相まり、公務員という安定への願望があったのだと思います。ただ、最近は民間企業の賃金が上がっているので、初任給だけで比較されてしまうとどうしても厳しい面があります。今は比較的安定していますが、今後、応募者数が減少するのではという危機感は常に抱いています」

だからこそ、コンセプトに「最速最先端の地方公務員採用」を掲げる。「練習だけして他に行ってしまうという懸念はないのか?」と尋ねると、むしろ積極的に利用してもらいたい、とおおらかだ。「そもそも公務員と民間企業を併願する方は多いのです。ぜひ天秤にかけてもらって、それでも塩尻市の姿勢に興味を持って、ここで働きたいと言ってもらえたらうれしいですね」(嵯峨さん)

最速最先端を追求する塩尻市の採用スキームを活用して、可能性を広げてもらう。その結果が、塩尻市の魅力発信につながると嵯峨さんは信じている。

PRにも力を入れており、マイナビなどの合同説明会にも積極的に参加し、学生に直接アピールする場を確保してきた。

最速最先端は、採用面だけに留まらない。自治体が運営する公共交通についても、従来型の時刻表に基づくコミュニティバスをやめて、スマートフォンアプリや電話から必要な時にバスを呼ぶAI活用型オデマンドバス「のるーと」を長野県内で初導入。無人バスを使った自動運転の実証実験にも手を挙げて民間企業とともに進行中、将来的な実装を目指している。

最速最先端はどれだけ応募者を惹きつけるか。

まもなく、2027年4月採用に向けた応募が始まる。