駿河湾をまたぐ静岡県5市町連携で実現する「旅先納税®」。「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」の新たな活用-「しず旅コイン」共同記者会見レポート
静岡県は2026年1月9日、県庁にて「旅先納税®」の導入および共通返礼品となるデジタル地域通貨「しず旅コイン」の発行開始に関する共同記者会見を開催した。本取り組みは、静岡市、伊豆市、下田市、南伊豆町、松崎町の環駿河湾地域5市町が連携して観光事業の活性化を目指し、さらに静岡県が国から交付を受けた「新しい地方経済・生活環境創生交付金」(先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】、以下、「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」)を一部活用している点に大きな特徴がある。
観光客が現地でふるさと納税を行い、その返礼品として即時に受け取れ現地で利用できる電子商品券を発行する仕組みである「旅先納税®」は、全国で導入が進んでおり、複数の市町村が連携する広域連携での展開は、環駿河湾地域5市町での広域連携が全国で6例目とのこと。本レポートでは、環駿河湾地域5市町が実施する「旅先納税®」および「しず旅コイン」の概要に加え、「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」を活用するに至った背景や、新たな観光活性化施策を紹介する。
(取材:デジタル行政編集部)
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静岡市と伊豆半島をつなぐ5市町で使える「しず旅コイン」

会見では、「しず旅コイン」プロジェクトリーダーを務める静岡県スポーツ・文化観光部長代理の平塚氏により、本取り組みの概要について説明が行われた。「しず旅コイン」は、環駿河湾地域5市町(静岡市・伊豆市・下田市・南伊豆町・松崎町)が実施する「旅先納税®」の共通返礼品として発行されるデジタル地域通貨である。旅行者は専用サイトや加盟店に設置されたポスターやポップなどに記載の二次元コードから、スマートフォンとクレジットカードを使って簡単に寄附を行うことができ、寄附額の30%相当分がデジタル地域通貨として返礼され、即時に受け取り利用できる。
本事業では、寄附先の市町を寄附者が選択することができる。寄附額は、1万円から最大500万円まで複数用意されており、例えば3万円の寄附であれば9,000円分の「しず旅コイン」が返礼される。
「しず旅コイン」は、静岡市、伊豆市、下田市、南伊豆町、松崎町の環駿河湾地域5市町にまたがる73の加盟店(2026年1月9日時点)で利用可能で、飲食・宿泊・体験・交通に活用できる。アプリのダウンロードは必要なく、二次元コード認証や電子スタンプによる決済が可能である。なお、ふるさと納税の仕組み活用しているため、寄附者は、寄附金額から自己負担額の2,000円を除く全額が、翌年の所得税・住民税から控除される。
フェリーを軸とした県内周遊型の観光活性化を目指して
-「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」の活用
本事業は、静岡県が実施する「令和7年度デジタル地域通貨活用事業」として実施され、静岡県が国より交付を受けた「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」が一部活用されている。
「先進的デジタル公共財活用型【TYPE-V】」とは、複数自治体が共同でツールを調達・利用し、デジタル庁が提供・推奨するシステム/サービス(=デジタル公共財)を活用、またはブロックチェーンやAI等の新技術を積極活用して、地域課題の解決や魅力向上を図る取組を国が支援する枠組み。共同調達・共同利用、デジタル公共財(新興型含む)の活用などが要件として示されている。
交付金の活用について、プロジェクトリーダーの静岡県スポーツ・文化観光部長代理平塚氏は「通過型で素通りされがちな県内観光の課題解決につながる。駿河湾フェリーを軸とした観光施策を考えたとき、ふるさと納税の返礼品としてフェリーの乗車料金はじめとした現地での飲食・宿泊・体験に利用できるデジタルコインを発行し、全体でデジタル運用することができれば、観光客の滞在時間を延ばしもっと周遊しやすくなるのでは、と考えた。そういった点が交付採択につながったと思う」と語る。
さらに、通常「旅先納税®」は主に市町村単位で実施されるが、本事業では県が主体となり、「旅先納税®」の広域連携を前提とした制度設計がなされた。県自体は寄附の受け取り主体とはならず、あくまで観光周遊と地域経済活性化を目的にプロジェクトを牽引している点も特徴的だ。 市町の枠を越えた周遊が自然に生まれ、結果として県全体の経済効果を高めることが期待されている。
加盟店が期待をよせる観光効果

会見では「しず旅コイン」の加盟店の代表者らによるコメントが寄せられた。
一般社団法人ふじさん駿河湾フェリー理事長の山本氏は、「清水港から土肥港を結ぶフェリーは、移動手段であると同時に富士山を望むことができる海上観光です。「旅先納税®」および「しず旅コイン」をきっかけに、静岡と伊豆を横断する旅を楽しんでいただきたいです」と語った。
また、土肥金山を運営するゴールデンパーク土肥株式会社代表取締役の東野氏は、「リニューアルを経て、より多くの観光客に訪れてもらいたいタイミングでの加盟参加となりました。「しず旅コイン」の名が一般化され、地域まるごとの活性化につながれば」と述べた。
宿泊・温泉施設を運営する株式会社CSA travel専務取締役の池谷氏からは、「スマートフォンで気軽に寄附ができ、返礼品の「しず旅コイン」を利用して、そのまま地域を巡ってもらえる点が魅力です。今後対象エリアや加盟店が増えることを期待しています」との声が聞かれた。
「しず旅コイン」運用デモンストレーション
会見では株式会社ギフティ常務執行役員の森氏と一般社団法人駿河湾フェリー理事長の山本氏による「しず旅コイン」の利用シーンを想定したデモンストレーションが行われた。

利用者はまず、専用サイトで寄附先自治体を選択し寄附金額を選択し、クレジットカードで決済を行う。すると、即時に「しず旅コイン」が返礼され、画面上に残高が表示される。

加盟店での支払い時には、店舗に設置された決済用の二次元コードを読み取る、もしくは電子スタンプを押印することで、1円単位での決済が可能だ。利用済み処理はリアルタイムで反映され、不正利用を防ぐ仕組みも組み込まれている。 加盟店には「旅先納税®」のポップやポスター等が設置されており、例えば飲食店での食事中、店舗の掲示物で「旅先納税®」を知った場合も、会計までに寄附を済ませれば返礼品の「しず旅コイン」を支払いに利用することができるため、「追加でもう1品頼もう」というニーズもありそうだ。

この一連の流れは、観光客・加盟店の両者にとって恩恵があり、デジタル技術により利便性が高い設計となっていることが印象的である。
広域連携でひろがる観光活性化
「しず旅コイン」は、デジタル地域通貨にとどまらず、海をまたぐ地域での広域連携による観光活性化を促す先進的な取り組みでもある。
静岡県の観光といえば、温泉地である伊豆半島が有名であるが、新幹線の静岡駅がある静岡市とは駿河湾を隔てている。「通過型の県」と言われることもある静岡県の観光を活性化し、駿河湾フェリーを観光周遊で盛り上げたい、という思いのもと、今回の5市町広域連携は実施された。「しず旅コイン」の加盟店には駿河湾フェリーの運賃や船内アクティビティの利用代金も含まれていることから、観光客が気軽にフェリーを利用するきっかけとなることが期待される。
プロジェクトリーダーの静岡県スポーツ・文化観光部長代理平塚氏の言葉を借りると、本取り組みは一石二鳥ならぬ「一石五鳥」であるとのこと。
①県内の観光収入を増やし、②市町のふるさと納税寄付システムが整備され、③加盟店の売上に貢献、④利用者には返礼品という形で観光周遊を楽しんでもらい、⑤駿河湾フェリーの利用促進へとつながる、この5点が「しず旅コイン」の導入により達成されることが理想となる。今後は県内の他市町への拡大も視野に入れている。
「旅先納税」のソリューションを提供する株式会社ギフティの常務執行役員森氏は、複数の市町村が広域で連携する「旅先納税®」は静岡県の本取り組みで全国6例目となり、広域連携することで生まれる強みに言及した。
京都府では7自治体、奄美群島では12自治体といった先例を紹介し、広域連携により、観光客が返礼品を使って自治体区分を気にせずに周遊できるようになり、周遊先全体での観光促進につながっているとのこと。観光振興を目的としたふるさと納税を視野にいれている地域にとっては、広域連携型での「旅先納税®」はひとつの観光施策として効果が期待できるのではないだろうか。
デジタル公共財としての共通基盤を活用し、自治体・事業者・旅行者それぞれにメリットをもたらす本事業は、地方創生DXの先進例として、今後全国から注目を集めることになりそうだ。
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