熊本県小国町、ローコード開発プラットフォームを活用して被災状況報告アプリを開発:災害時における迅速な初動対応を実現[インタビュー]

熊本県小国町、ローコード開発プラットフォームを活用して被災状況報告アプリを開発:災害時における迅速な初動対応を実現[インタビュー]

※総務課 審議員 松本徳幸さん(左)、総務課DX推進係 係長 松本恵さん(右)


熊本県の最北端、阿蘇外輪山の外側に位置し、250年続く林業の文化が息づく小国町では、DX推進の一環として、アステリア社のローコード開発プラットフォームPlatioを導入し、被災状況報告アプリをはじめとした様々なアプリを開発してきた。今回は、総務課 松本徳幸さん、松本恵さんに、アプリの開発から運用に至るまでの経緯や取組、想いについてお話を伺った。

(聞き手:新井 なつき)

-小国町のDX推進係が行っている取組についてお聞かせください。

DX推進係は、機構改革によって今年度より新設された係です。庁舎のシステム、PCやサーバーをはじめるとする機器の管理等、自治体DXが主な業務です。

-Platioを導入された経緯について、お聞かせください。

アステリア株式会社とは、平成27(2015年)年度から協定を結び、小国杉の保全などを行ってきました。平成29(2017)年度からは企業版ふるさと納税により毎年寄付を頂いています。
Platioを導入したきっかけは、コロナ禍で職員の体調を把握するため、「検温アプリ」を利用し、朝の体温を報告するようにしたところがはじまりです。検温アプリ導入後、毎日打刻するタイムカードもデジタル化し、職員の業務改革にも繋げたいと考え、検温結果も入力できる「出退勤アプリ」を新たに作成しました。その後、同アプリのテンプレートの中から「被災状況報告アプリ」をベースに小国町版の作成に着手しました。

-「被災状況報告アプリ」を開発されたのは、どのような経緯がありましたか。

これまで災害時には、職員を災害があった現場に派遣し、災害箇所や災害状況を確認してもらい、帰庁後に情報共有するというアナログな対応となっていました。また、県や災害本部に災害箇所や災害内容を報告する際にも、現場に派遣された職員の報告を待たなければならず、かなりの時間を要していました。
そこで、Platioの中にある「災害状況報告アプリ」のテンプレートをベースに小国町版に改良し、「被災状況報告アプリ」を作成したのが経緯です。

-「被災状況報告アプリ」を開発される以前にはどのような課題がありましたか。

以前は、町民からの電話により集めた被害情報を総務課で取りまとめ、その後、職員が現場に向かい状況の確認を行っていました。数件であれば、この手法でも対応できますが、令和2(2020)年7月に発生した豪雨では、被害箇所が500か所以上に上り、従来の方法では災害状況の取りまとめが間に合わない状態でした。この災害では、手書きで記録したものをExcelに入力して被害情報を集計していましたが、リアルタイムではないことに加え、情報の重複等が発生していました。

-実際に開発されたアプリ「被災状況報告アプリ」についてお聞かせください。

登録職員名及び部署名、被害箇所の地区名、被災対象物の区分、対応の未済(3段階制)、特記事項の入力ができるほか、写真を添付することができ、入力時に自動でグーグルマップの位置情報が保存されるため正確な被災状況の把握につながっています。また、アプリは常に更新され、リアルタイムの報告状況を閲覧できます。
職員は、タブレット又は個人のスマートフォンにアプリをインストールして使用できます。各部署にタブレットを配置していますが、個人のスマートフォンから使っている職員がほとんどです。

-「被災状況報告アプリ」はどのような開発体制で進めましたか。

防災担当、政策担当、電算担当の複数名体制によりアプリ作成を進めました。当初は、主に政策担当の職員が開発を進めており、電算担当(松本徳幸さん)がPlatioのテンプレートの中に「災害状況報告アプリ」を見つけ、防災担当の職員に地図情報等を熊本県への報告に活用できるか相談し、活用できると分かり「被災状況アプリ」の開発に至りました。

-実際に「被災状況報告アプリ」を開発するなかで、大変だったことや課題に感じられたことはありますか。

初版のアプリでは職員が閲覧した災害情報を削除することができるようになっており、誤って削除してしまい、履歴情報が残らない不具合がありました。この問題を解消するために、一般ユーザーでは削除できないような仕様に改良しました。そのほか、ユーザーが簡単に入力できるUIを作成するように工夫しました。

-「被災状況報告アプリ」の運用後には、どのような業務の変化や効果がありましたか。

まず、リアルタイムで被災状況が記録されることで、災害対策本部へ報告する時間的ロスが発生しなくなり、地図情報が記録されることから発生場所などが正確に把握でき、情報伝達の高速化、迅速な初動対応につながりました。また、職員が出勤途中で発見した被害状況等の写真をアプリに記録する者も出始めました。

運用当初は従来のペーパーによる報告も併用していましたが、職員が利便性を感じ、入力に慣れてくることで気軽にアプリを活用するようになったと思います。「被災状況報告アプリ」以外にも複数のアプリの活用に移行しましたが、活用場面を広げていく中で職員のアプリに対するハードルは無くなったのではないかと感じています。

-被災状況報告アプリのほかに、新しく開発されたアプリはありますか。

「避難者数報告アプリ」(避難所の避難者数報告)、「出退勤アプリ」(タイムカードの打刻からの移行)、「公用車使用簿アプリ」(約40台の走行記録)、「投票者報告アプリ」(各投票所の投票者数報告)を新たに開発しました。これまで電話報告や紙への記録で行っていたものをアプリ化しました。

-「被災状況報告アプリ」をはじめ、「避難者数報告アプリ」や「出退勤アプリ」等、小国町で継続的にアプリを開発・運用できているのは、どんな要因があるのでしょうか。

職員の個人用スマートフォンにアプリを入れてもらうことで、日常的に使用する身近なアプリになっていることが大きな要因だと思います。また、各部署に配布しているタブレットからも入力できることから、全職員を対象として利用を拡大することができています。

-今後、ローコードツールをどのように活用していきたいとお考えでしょうか。

基本的には自席では行えない業務(現地での調査・報告を必要とするものなど)のアプリ化に活用できないか検討しているところです。例えば、介護認定調査業務などに活用できないか模索しています。現在は、職員が調査対象者の自宅に訪問して手書きで報告内容をまとめていますが、アプリ化して業務の効率化につなげられないか検討しているところです。