【京都府向日市】ふるさとWEB検定にかける思いと自治体DXの課題[インタビュー]

【京都府向日市】ふるさとWEB検定にかける思いと自治体DXの課題[インタビュー]

京都府向日市(むこうし)、西日本で最も小さい市としても有名な人口約5万6000人(令和5年8月1日現在)の都市だ。

今回は企画広報課の阪口主任にオンライン検定の取り組みと自治体のDXについてお話を伺った。
※組織改正により、令和5年10月1日からは産業振興課で本事業を実施しています(文中では取材当時の部署名で記載しています)

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同市ではこれまで会場で実施していた向日市ふるさと検定を「向日市ふるさとWEB検定(URL)」としてリニューアル。オンラインでの開催に切り替え、DXの取り組みを加速させている。

向日市は京都駅からほど近い位置にあり、竹の径、史跡長岡宮跡などの観光地も有するなど、外国人観光客のインバウンドなども期待される都市だ。京都、大阪と大都市へのアクセスが容易で住居としても魅力がある一方、アクセスの良さゆえに市外への人口流出も多い都市となっている。

(写真 左:史跡長岡宮跡 右:竹の径)

こうした状況の中、向日市の企画広報課では、認知の拡大や市への愛着の醸成などを目的に平成27年度から「向日市ふるさと検定」を実施している。

ふるさと検定は、誰でも受検が可能で初級は無料、中級・上級は有料で受検できる。テキストなどもあり、実施にあたっては会場を借りて、監督者も置くなど、かなり本格的な検定試験として実施されてきた。

今回は、こうした会場での検定をWEB検定へと切り替えた。WEB検定への切り替えについてはどういった背景があったのだろうか。

これについて阪口主任は「最大の狙いは受検者を増やすこと、それによってもっと多くの方に向日市を知っていただきたいという思いがあります。ふるさと検定は令和4年度で7年目になるのですが、受検者が年々、減少していたこと、また、若い方への認知が低いことが課題と考えていました。受検する時のハードルの一つとして、会場に行く必要がありましたので、WEBでの検定であればそうした時間や場所の制限は解消されるのかなと思います」とWEBでの実施による受験者の増加に期待を寄せている。

コロナ禍で自治体のDXも進んだとされる一方、まだまだ足りないという意見もある。WEB検定導入にあたってのハードルや苦労について同氏はこう語る。

「まず、これまで検定を会場で実施してきたこともあり、検定とは会場でやるものという固定観念があったように思います。私自身ITが苦手なこともあり、本当にWEBへ切り替えて上手くいくのかという不安、例えば不正行為等への対応など、様々な不安がありました。一方で、コロナ禍もありましたが、これまでも悪天候による中止など、会場に行かなければ受検できないことのデメリットも抱えていました」

DX化については効率化による良い側面がある一方で、逆に負担が増える場合もある。

こうした懸念についても、「オンライン化で良かったことは、先ほどもお話しましたが、時間と場所を選ばずに受検ができるようになったことです。後は、管理のコストもかなり下がりました。紙の印刷、合格証などの送付、会場の予約、当日の試験監督者も不要になったことはかなりの負担軽減になりました。今はlearningBOXを使用していますが、紙の検定をほぼ再現できており、申込から検定、合格証、最後のアンケート回収まで問題なくオンライン化出来ています。まだ切り替えたばかりなので、具体的な課題や新たな問題は明確になっていません。操作手順のマニュアルを掲載するなどしていますが、やはりITが苦手な方や機器の操作に不慣れな方が無事に検定を終えられるか懸念しています。」と同氏はオンライン化への期待と不安を述べた。

行政の施策においては利用者のサービス低下を招かないようにするというのは非常に重要なポイントだ。今回はふるさと検定のオンライン化を主に向日市のDXの取り組みをご紹介いただいた。

そのほかにも、向日市ではペーパーレス化や決裁手段のシステム化などの取り組みを進めており、職員の事務環境についても、DXによる事務効率の改善を図っているとのことだ。一方で、住民サービスの面ではDXによって改善できる余地がまだまだありそうとのことで、今後の取り組みについても期待される。

最後にオンライン検定をはじめ、DX化、デジタル化の取り組みについて、阪口主任にご自身の思いを語っていただいた。


「今回は不安もありましたが、無事に紙の検定をWEB検定に切り替えることができました。新たな課題も出てくると思いますが、1つ1つ改善していきたいと思います。私自身はICTやパソコンの操作が苦手で、事業者のサポートには大変助けられました。きっと、私のようにパソコンの操作などが苦手な方も行政の職員さんにはいらっしゃると思います。推進する部署や事業者の皆さんにはシステムの中身と同じくらいサポートや教育を重視してもらえたら、DX化はもっと進んでいくような気がします」

今回はオンライン検定と自治体のDXについて向日市企画広報課の阪口主任にお話を伺ったがいかがだっただろうか。終わりの言葉にもあったようにシステムを導入するだけではDXの真の効果は発揮できず、使いこなしてこそのものであることが改めて実感できた。

今後も自治体と事業者が上手く連携しながら、利用者に寄り添ったDXの活用に期待したい。