市民一人ひとりに合わせた情報発信が可能に!
地域データ連携基盤を活用した「那須塩原市デジタルサービス」とは? [インタビュー]

市民一人ひとりに合わせた情報発信が可能に!<br>地域データ連携基盤を活用した「那須塩原市デジタルサービス」とは? [インタビュー]

栃木県那須塩原市は、地域データ連携基盤を活用した行政サービス「那須塩原市デジタルサービス」の運用を開始した。地域ポータルアプリやデジタルエコポイントアプリなど、これまでは別々のIDで登録していたアプリを、1つのIDで管理することで、行政サービスの向上と効率化、地域の活性化などの効果が期待されている。県内初となる自治体主導の地域データ連携基盤を活用した取り組みについて、那須塩原市デジタル推進課の方にお話しを伺った。

(聞き手:デジタル行政 編集部 町田 貢輝)

栃木県初の自治体主導による地域データ連携基盤を活用した行政サービス

――デジタル推進課の業務内容を教えてください。

庁内システムの改修や市民皆様の要望を、DXを推進することで実現・改善していくセクションになります。11名の職員と外部委託職員が協力して、さまざまなDX関連事業に取り組んでいます。

――「那須塩原市デジタルサービス」とはどのようなシステムですか。

内閣府が推進する「デジタル田園都市国家構想交付金」の採択を受け、地域データ連携基盤を活用した「ファミリー層が住みやすいまちづくり」の創出を目指したサービスになります。
具体的には下に紹介する4つのアプリを地域データ連携基盤と共有させることで、那須塩原市の皆様は、1つのIDを持っていれば、サービス毎にアカウントの作成が不要となり、データ連携基盤と接続しているサービスやシステム間の連携が可能となります。

連携している4つのアプリは、

・地域ポータルアプリ
市民の皆様一人ひとりに合わせた情報を配信するアプリ。

・母子手帳アプリ みるみる
子育て関連情報を子どもの成長ステージに合わせて配信するアプリ。

・観光パスポートアプリ
観光情報やクーポン配信により、市民の皆様、観光客の皆様が那須塩原市の魅力を発見・再発見できる「LINE」を活用した観光案内アプリ。

・エンジョイecoなすしおばらアプリ
環境配慮行動に対して電子ポイントを付与するアプリ。

になります。
この4つのアプリを基盤と連携させることで、データの連携・分析ができるようになり、付加価値を創出し、より便利なサービスへ展開できる取り組みを進めています。

各アプリ利用画面。

――自治体が構築した地域データ連携基盤を活用した本サービスは、那須塩原市が栃木県初の試みとのことです。「那須塩原市デジタルサービス」を始めようと考えたきっかけ、取り組む上で気をつけたことを教えてください。

地域の課題解決、市民の皆様に支持される持続可能なまちづくりを実現する、といったところが、取り組みを始めたきっかけになります。
気をつけたことは、質問の通り、県内初の自治体主導のデータ連携基盤の構築ですので、まず、取り組む職員がデータ連携基盤を活用して「どんなことができるのか」「どんな方法で課題解決するか」よく理解することが重要と考え、まず、データ連携基盤についての調査研究を行いました。
データ連携基盤を理解するにあたり、三菱商事様と連携協定を結んでいたので、三菱商事様にオンライン研修のサポートや、ご助言をいただきながら、事業を進めることができました。

「那須塩原市デジタルサービス」の全体イメージ図。

――「那須塩原市デジタルサービス」を利用することで、市民の皆様はどんなメリットがありますか。

・地域ポータルアプリ
令和6年度から市内全ての小中学校で学校から保護者への連絡ツールとして活用が始まり、保護者の皆様はこれまでプリントやメール連絡帳など様々な手段で来ていた通知を一元管理することができるようになりました。学校現場だけでなく様々なコミュニティで使用いただけるサービスなので、煩雑な情報管理を円滑に行ってもらえるようこれから普及促進に力を入れていきます。

・母子手帳アプリ みるみる
子育て関連情報をタイムリーに入手することができ、妊娠・出産・子育てと段階に応じた手続きの管理がしやすくなり、非常に好評を得ています。

・観光パスポートアプリ
観光客はもちろん、市民の皆様も気づいていない市の魅力がたくさんあります。観光パスポートは、市の魅力を再発見できるほか、お得なクーポンなどを配信しているので、週末のお出かけの一助になっています。

・エンジョイecoなすしおばらアプリ
これまでは紙媒体で運用していたため、デジタル化したことで気軽に参加できるようになりました。また、エコバックを持参してお買い物をするなどの普段の環境配慮行動に対してポイントが付与されるため、モチベーションの維持にも役立つほか、エコポイントの利用用途も随時拡大しています。

そして、これらのデジタルサービスがデータ連携基盤と連携しているメリットは、共通IDで4つのアプリのサービスを受けられるということです。今までは、サービス毎にアカウントの作成が必要でID/パスワードをそれぞれ覚えておく必要があり、アカウント情報を管理するのが大変でした。
将来的には、地域ポータルでの投稿内容に合わせたエコポイントの付与だったり、災害時にはデータ連携基盤に蓄積している避難所情報を観光パスポートで配信したりと、各サービスだけでは実現できないことが、データ連携基盤と連携することで実現できるようになります。
こうした、タイムリーな情報取得、容易な情報管理、子どもとの外出の手助けとなる取組やデータ連携基盤と接続することによる付加価値を通して子育て世代の負担を軽減することで、目標に掲げている「ファミリー層が住みやすいまちづくり」にもつながっていくと考えています。

――「那須塩原市デジタルサービス」をどのような場面で使ってほしいですか。

日常生活の中で使ってほしいです。観光パスポートアプリであれば、家族とのお出かけに、エコポイントアプリであれば、普段の生活の中でエコポイントが付与されるようになりますので、エコとちょっぴりお得な生活を送ることができます。
その他にも日常生活に役立つ情報、子育てのお供になる情報をそれぞれ配信していきますので、個人個人のライフステージに合わせて活用してもらえるとうれしいです。

――市民の皆様の反響を教えてください。

まだ始まったばかりのサービスですが、利用者からは好意的な意見をいただいています。今後もより多くの方に使ってもらえるように、サービスの拡大や広報活動にも力を入れていきたいです。

「那須塩原市デジタルサービス」では、利用者が自身のデータをどんな事業者・サービスに
提供するかを選択することできる“自己主権型のデータ管理モデル”を採用している。
そのため、利用者にあったサービスを確認することができる。

――ちなみに、「那須塩原市デジタルサービス」は県外の方も使えますか。

地域データ連携基盤を利用しているため、共通IDを利用した「那須塩原市デジタルサービス」は、那須塩原市民のみになります。
ただ、共通IDとの連携はできませんが、観光パスポートアプリはLINEのお友達登録をすれば使用することができますので、本市にいらっしゃる際の旅のお供としてぜひ、活用してください。

「那須塩原市デジタルサービス」で生活の質向上を目指す

――「那須塩原市デジタルサービス」は、マイナンバーカードを利用したxID(クロスアイディ*1)アプリが利用できるとのことですが、那須塩原市のマイナンバーカード保有率を教えてください。

那須塩原市の保有率は2024年4月末時点で76.6%と、栃木県では保有率1位となっております。
共通ID(xIDアプリ)の利用は必須ではありませんが、利用することで利便性が向上します。例えば、地域ポータルアプリとエコポイントアプリを同じ人が使用する場合、xIDで連携すればそれぞれのアプリで個別にアカウント作成をする手間が省いて各アプリを利用できます。

(*1)マイナンバーカードと連携して公的個人認証を行い、本人確認や電子署名などの機能を提供するデジタルIDアプリ。

xIDアプリで各アプリへの登録・ログインが簡単に!

――「那須塩原市デジタルサービス」で行政業務の効率化が図れたでしょうか。

業務効率向上への道筋ができたと考えています。行政からの情報発信は、皆様もご存じの通り手紙の発送やポスターの展示など紙が主流でしたし、発信手段も郵送やメール、LINE、回覧板、広報誌など多岐にわたっています。
その部分が、地域ポータルアプリ等で情報を配信する形に集約し切り替わっていくことで、迅速な情報の発信やペーパーレスによる効率化の改善につながっていくと考えています。
まだまだ始まったばかりのサービスですが、サービスが定着することで、行政業務の効率化が図れると見込んでいます。

――今後の「那須塩原市デジタルサービス」の展望を教えてください。

データ連携基盤に接続するサービスやシステムを増やし、より市民の皆様が便利に情報の収集や行政からの連絡を受け取れる形にしたいと考えています。
それから、連携基盤に蓄積するデータの有効活用も進めていきます。「那須塩原市デジタルサービス」には、那須塩原市のさまざまなデータを可視化する「那須塩原市データ分析サイト」や公開しているオープンデータを検索できる「那須塩原市データカタログサイト」など、蓄積したデータを分析できるサービスもあります。これらを活用することで、市民のニーズや行政の課題を把握し、より効果的なサービスの提供と政策の立案が行えればと考えています。
また、蓄積したデータを企業が利用することで、新しいサービスや商品が開発されれば、市民の皆様はより品質の高いサービス、商品を受け取ることができ、生活の質も向上していくでしょう。
「那須塩原市デジタルサービス」を通して、那須塩原市にかかわるすべての人の幸福につながることを目標に、アップデート等の作業に力を入れていこうと思います。

――最後に那須塩原市で進めているその他のデジタル化の取り組みについて教えてください。

那須塩原市では、市民課や課税課など、市民の皆様が利用することの多い窓口での「書かない窓口」の展開やオンライン申請による住民票の取得・採用試験の申込、キャッシュレス決済の導入などの取り組みを進めています。
今後も、11人のデジタル推進課職員を筆頭に、全庁体制でデジタル化を進め、より便利な行政サービスを市民の皆様にお届けできるように、業務に邁進していきます。

インタビューに答えてくれたデジタル推進課の佐藤辰徳グループリーダー(システム管理担当)、高根沢めぐみ課長補佐、鈴木正宏課長、大橋喜子グループリーダー(デジタル政策担当)。(※左から)