青梅市の目指す“スマートローカル”― 「書かない窓口」で市民と職員の負担を削減―[インタビュー前編]

青梅市の目指す“スマートローカル”― 「書かない窓口」で市民と職員の負担を削減―[インタビュー前編]

東京都青梅市では、令和5年2月から市役所の一部の課で「書かない窓口」をスタートさせ、8月現在は6課の窓口にて、17手続き・30種類の申請に対応している。DXに関する市の基本方針「スマートローカル青梅」の策定から1年以内で実現された書かない窓口だが、青梅市ではどのような体制で、書かない窓口の取り組みを推進してきたのか。同市の市民課およびDX推進課のメンバーにお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 編集部 柏 海)

なお、本インタビューは2部構成となっており、後編では青梅市の「DX推進課」による取り組みについて取り上げる。

※ 後編はこちら(URL)。

市民課を起点とした住民異動手続きを対象に運用

―青梅市ではDX推進について、どのような形で進めているのでしょうか。

DX推進課 青梅市では令和4年度より、市のDX推進方針を示した「スマートローカル青梅」を策定し、そのための第1歩として、「市民が市役所へ来庁しなくても、各種申請ができるような環境づくり」を実現することを掲げています。

また、その第1歩を実現するために、「行政サービスを変える」「市役所を変える」「地域社会を変える」の3つのテーマを設けて、スマートローカル青梅の取り組みを進めております。ちなみに、青梅市で現在進めている書かない窓口については、行政サービスを変えていくなかでの取り組みということになりますね。

―「書かない窓口」は青梅市役所内でどのように推進してきたのでしょうか。

市民課 書かない窓口は市民課のDX推進・窓口業務改革として、市役所の中でも窓口において、一番大きな取り組みの一つとして推進してきました。

なお令和5年度8月現在、書かない窓口は、市民課・保険年金課・高齢者支援課・介護保険課・障がい者福祉課・こども育成課の6課にて、転入・転出など住所異動が伴う手続きと出生届を対象として実施しています。市民課を起点とした住民異動手続きの際に限り連携している、というとイメージがしやすいかもしれませんね。

令和4年度4月の取り組みの開始にあたって、青梅市では庁内に「市民窓口サービス検討委員会」という窓口職場の課長で構成される委員会が既にあったので、その委員会内で「まずは市民課からのスモールスタートとしつつ、将来的には全庁的に進めることも見越して皆さんからの協力を得たい」というお話をさせていただきました。

―その後は、具体的にはどのような手順で進行をしましたか?

市民課 “青梅市に合った運用をする”ということで、導入範囲の決定をしました。その結果、書かない窓口を住民票の取得など全ての手続きに対応させるのではなく、まずは市民課を起点とした住所異動の手続きと出生届の手続きの際に連携させることとしました。

その後は、連携課の担当者との打ち合わせの機会を設けながら、設問の作成や申請書の見直し等も各課と調整の上で実施し、新たな窓口業務フローを作成・共有しました。特に窓口業務フローについては、青梅市の市民課では現在、窓口業務の大半を委託しているため、現場で対応をされている委託職員の皆さんの意見もよくお伺いしたほか、窓口業務終了後の集合研修、隙間時間によるシステムの操作研修なども実施しました。

その結果、引越しワンストップサービスと書かない窓口については、繁忙期を迎える前の令和4年度2月に稼働をスタートさせることが出来ました。なお、青梅市では、亡くられた方に関して市役所でおこなう様々な手続きをワンストップで支援をする「おくやみ支援窓口(URL)」についても、令和5年度の6月12日から開設しています。

担当者のスキル・経験が浅くても正確な手続きが可能

―書かない窓口において、実際に窓口に訪れた市民の方は、どのような形で利用をされるのでしょうか。

市民課 まず、窓口の担当職員が本人確認等をしたうえで、届出の内容をお伺いしながら、届出用紙をパソコンで作成します。この聞き取りの質問内容については事前にセットをしていますが、届出用紙の内容が確定しましたら、市民の方にご確認をいただいたうえで、署名をいただきます。

市民の方の負担軽減だけではなく、対応する職員の経験が浅い場合でも、事前にセットされた質問内容に基づくことで、手続きの漏れなく案内が出来るのは、大きなメリットだと思います。

市民課での手続きが終わった後は、関連する手続きが必要な担当課と内容を記載した手続き案内票をお渡ししますので、次の窓口(課)でその手続き案内票を提示していただきます。窓口職員のノートパソコンのWebカメラで二次元コードを読み取れば、市民課で聞き取りをした情報が印字された申請書がそのまま印刷できるようになっていますので、次の窓口で再度の聞き取りや手書きをする必要もありません。

DX推進課 書かない窓口の導入にあたっては、来庁者の負担軽減や滞在時間の短縮など、市民サービスの向上も目指していましたが、「担当者ごとのスキル平準化を可能とし、職員の経験が浅くても正確に手続きが進められる」というのも大きなポイントでしたね。

また、書かない窓口と一口で申し上げても、市民の方にタブレットで記入・選択・操作をお願いするなど、様々な方法がございますが、青梅市では「出来る限り多くの人がデジタル化の恩恵が受けられるようにしたい」という判断から、来庁された方が極力、デジタル機器を触らなくても手続きが進められる方法を選択しました。

職員の窓口対応の時間も約半分に削減

―運用開始から約半年が経ちましたが、書かない窓口の導入効果についてはどのように分析をされていますか?

市民課 市民におかれては、書類を記入する必要が無くなったのが単純かつ大きなメリットですね。このメリットは、手続きが複数の課にまたがり、何度も同じ情報を記入する必要があった人ほど、恩恵を感じられたことかと思います。

職員においては、子ども育成課など連携先の課からは、市民課で作成された届書の情報をそのまま使えて、書類記入の時間がなくなったことで、窓口対応の時間が半分ほどになったと聞いております。

一方で、市民対応の入り口となる市民課においては、聞き取りをしながら届書を一緒に作成していくため、窓口での対応時間に限れば、市民の方にあらかじめ記入をしていただいた時よりも、若干増えたかと想定しております。ただ、聞き取りをしながら書類を作成できるので、手書きの時よりも届書の文字や数字が正確に把握しやすく、書き直しなどの修正をお願いすることもないので、確実な案内が可能となったのは大きなポイントだと考えています。

今後は「行かない窓口」も積極的に推進

―今年度(今後)の書かない窓口の取り組み予定についてお聞かせください。

市民課 税関係、学校関係など、市民課からの連携手続き数を増やしていきたいと考えており、現在は調整を進めております。また、現在の書かない窓口の運用では、窓口業務を外部職員に委託している関係もあり、書かない窓口から入力されたデータを基幹系業務システムに直接流し込む運用を実施しておりません。ここは引き続き、青梅市に適した新たな運用フローを前提に検討を進め、基幹系業務システムとの連携可能な仕組みを模索して行きたいと思います。

そのほか、書かない窓口に関連し、「行かない窓口」の推進ということで、行政手続きのオンライン化や書面・対面等の見直しにも引き続き、積極的に取り組んで行ければと考えております。

DX推進課 現在、青梅市では職員1人1台にノートパソコンを支給していますが「(かんたん窓口)システムをインストールさえしていいただければ誰でも書かない窓口の対応が可能となる」というのも青梅市の運用に合っていたと考えています。書かない窓口業務専用のPCなどを新たに購入・導入せずに済んだのは、非常に大きなコスト削減でした。

今後は更に多くの職員に使っていただけるよう、庁内における書かない窓口の推進もしていきたいと思います。

※ 後編はこちら(URL)。