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三菱総研が語る、自治体向けAIチャットボット進化の現状と今後[インタビュー]

三菱総研が語る、自治体向けAIチャットボット進化の現状と今後[インタビュー]

普及が進むAIチャットボット。自治体職員の問合せ受付業務効率の改善に大きく寄与することが期待されており、現在全国各地でその導入が広がり始めている。その中でも、最も導入が進んでいるサービス提供事業者である三菱総合研究所 デジタル・トランスフォーメーション部門公共DX本部 青木 芳和氏に、同社が提供する「AIスタッフ総合案内サービス」のサービス概要や、導入状況、今後のサービスの発展方向などについてお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 編集部 野下 智之)

1700に及ぶ会話パターンで自動対応

-製品の概要と特徴についてお聞かせください

「AIスタッフ総合案内サービス」は、2018年10月に提供を開始した、自治体様に提供している住民向けのAIチャットボットサービスです。

住民の方は、自治体様のHP上に表示されるチャットの窓口から、自由入力により、自治体に対して聞きたいことを入力。これにあらかじめ用意されている回答を自動で返すことで、24時間365日、住民からの問い合わせに対応します。
当社では1700に及ぶ、質問と回答のパターンを用意しており、AIチャットボットエンジンとのセットでご提供しているというのが特徴です。したがって別途自治体様のほうで、ご自身でQ&Aを準備する必要がありません。
住民向けサービスの一環として提供されており、個人情報を扱うことはないため、一般のインターネット回線を通して提供しています。

このサービスは、三菱総合研究所と、日本ビジネスシステムズの2社の共同開発で開発し、主に当社の業務資本提携先のアイネスが販売代理店として提供しています。

他社のチャットボットサービスの場合には、AIチャットボットエンジンはあるものの、Q&Aデータを自治体様が自ら準備する必要がありますが、当社の「AIスタッフ総合案内サービス」の場合、あらかじめ用意されており、HPへの実装・稼働に至るまで、自治体職員様の作業を極力抑えた仕組みとしています。

―貴社がこのサービスを開始した理由をお聞かせください

2040年問題として指摘されているように、行政職員数は今後減少をたどることが予想されており、職員の作業負荷を減らすことが求められています。まずは窓口における問い合わせ業務の負荷を減らすために、AIチャットボットの活用をご提案するのが良いと考え、私たちはこのサービスの提供をすることを考えました。

三菱総合研究所は公共団体向けの業務領域に強く、シンクタンクとして計画や戦略を立てるということを、これまで主な業務としてまいりました。しかし昨今はやはり実装のところまでに関わらないと、よりよい計画・戦略を立てることが難しくなりつつあります。
実際のサービス提供までを手掛けてみて、ここで得た知見をベースとなるシンクタンク業務の強化に使うというような取り組みの一環として作ったのが、このサービスです。

このサービス自体が生まれた背景は、2018年10月の正式なサービス提供開始からさかのぼり、2017年度に35団体と実施した実証実験にあります。この実証実験を経て、自治体職員様からAIチャットボットサービスが、求められる機運が高まりました。

全導入自治体の応対データを学習し、精度を高めるAI

-質問と回答が繰り返されていくことで、AIが学習して自治体ごとに、チャットボットの回答内容のオリジナリティーが高まっていくのでしょうか?

はい、その通りです。Q&Aデータはセットでシステムに蓄積されていきます。住民の方が自由に入力してきた内容を、AIが学習します。
蓄積された学習データは、1自治体だけに閉じずに、複数の団体でやり取りされたデータをもとに、チューニングされていくことで、その内容の精度が高まり、より洗練されたものとなっていくのです。

-導入団体についてお聞かせください

最初の正式な導入は、2019年4月の戸田市様と袋井市様においてとなります。
現在では、都道府県では埼玉県様と岐阜県様、政令指定都市では相模原市様と岡山市様、中核市、一般市、町村などそれぞれ幅広く60団体程度で導入していただいています。
最近の大きな導入事例としては、今年4月の岐阜県様主導による、一部を除く県内市町村への共同導入が挙げられます。

-自治体が導入に至るまでのプロセスをお聞かせください

まず、導入を主導する窓口ですが、各団体によりけりではあるものの、大きくは三つのケースに分類されます。情報部門、行革・企画部門、そしてHPを管理している広報広聴部門などです。
最近では、情報部門がDXという名前を冠した部門に変更されるケースが増えてきており、これらの部署から声がかかるということもあります。
期間については、自治体様側での導入までの準備について、概ね2~4カ月ほどを設けるケースが多いです。
また導入費用は、初期費用が100万円で、月額利用料は10万円からとしており、人口規模に応じた料金テーブルを設けています。

多言語化対応と申請手続連携に向けた機能強化へ

-このプロダクトを導入することで、どのようなところにメリットがあるのでしょうか?

住民の方にとっては、24時間365日お問い合わせが可能であるという点が大きいです。またWebサイトを見ても分からないことを、電話をかけずに聞くことが出来るというように、利便性が向上します。
また、自治体の職員様にとっては電話対応の件数が減ることから、生産性の向上にもつながります。問い合わせ内容の履歴が自治体側にデータとして蓄積され、これを分析することで住民の方が分かりにくいことや困っていることを浮き彫りにし、新しい行政の施策の参考とすることが出来るようになります。

-自治体向けAIチャットボットの進化の方向性についてお聞かせください

現在自治体様からのお問い合わせが多いのが、多言語への対応です。
「AIスタッフ総合案内サービス」では実証段階でありますが、外国語の方が母国語で問い合わせをすれば、母国語で回答が返ってくるというような機能は今後さらに求められるでしょう。

また、住民がチャットボットで問い合わせをした内容から、オンライン申請の手続きを案内できる機能も求められます。当社では総務省による2020年度の自治体AI実証において、戸田市様および川口市様とご一緒させていただいて、「AIスタッフ総合案内サービス」で児童手当への問い合わせがあった場合、そのまま手続きをすることが出来るというような機能を作りました。また、この申請データを庁内のシステムに取り込むというような実証実験を行いました。
今後は、当社の「AIスタッフ総合案内サービス」において、自治体DX推進手順書の方針等も考慮して、この機能を正式に取り込んでいくことを検討しています。

窓口業務のデジタル化に求められる今後

-自治体窓口業務における課題と、システムのニーズにおいて求められていることについて、お聞かせください。

やはりAIチャットボット自体は、定型的な、答えが決まっているような内容の質問については答えられるが、現状では、込み入った内容に関する質問には答えることが難しいです。
自治体では、生活相談、生活支援など、チャットボットでの応対だけで済ませることが出来ない窓口業務があります。職員の方は、対応内容を相談記録票として議事録を残しておく必要があります。このような業務をサポートすることを目的に、当社では、アイネスとの共同事業として、「AI相談パートナー」というサービスを、2021年4月より本格展開しており、議事録作成のサポートする文字おこしを自動で行うサービスを含めて提供しています。
このサービスは、住民の方のプライバシーに関わる機微な情報を取り扱うため、LG-WAN環境内でSaaS形態にて提供をしています。

-窓口業務のデジタル化という点において、技術的に求められていることはどのようなことでしょうか?

特別定額給付金のときにも課題となりましたが、今電子申請が紙とデジタルと2種類来た場合、庁内の職員の方の処理業務も2系統に分かれてしまい、煩雑になっています。

自治体職員目線では、完全にどこかでデジタルに一本化したほうが、業務効率が向上します。その意味においては、出来るだけデジタル化を進めていこうとする中で、窓口に来ていただいても、住民の方にその場で紙に書いていただくのではなく、タブレットで入力していただくというような対応が必要とされています。例えば、入力した情報をQRコード化するなどの方法で、出来るだけ情報源をデジタル化するというような仕組みを作っていくような取組みも行われています。

-窓口申請業務のデジタル化において、本人確認業務が発生しますが、その方法の方向性についてどのような方向性が考えられますか?

国の政策の方向性においては、マイナンバーカードを活用した公的個人認証ということになります。法令での定めによっては、マイナンバーカードによる公的個人認証というところは避けられません。
これに関わらない本人確認方法としては、住民の利便性も踏まえ、eKYC(electronic Know Your Customer)やID・パスワードによる認証など、手続きごとによる使い分けが行われていくのではないかと、考えております。