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広島市のデジタル化への取り組みを聞く―被災者支援ナビで住民・職員の利便性向上―[インタビュー前編]

広島市のデジタル化への取り組みを聞く―被災者支援ナビで住民・職員の利便性向上―[インタビュー前編]

広島県広島市は、豪雨災害等に対する被災者に対する支援策を被災者が簡単に検索することが出来るサービス「被災者支援ナビ」を導入した。被災者支援ナビを導入したことにより、住民の利便性が向上するだけでなく、窓口で従事する職員の業務負担も軽減された。同市の健康福祉局健康福祉企画課の永井孝司課長補佐と岩﨑政祝主事にお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 編集部 柏 海)

なお、本インタビューは2部構成となっており、後編では広島市のデジタル化について取り上げる。
※ 後編はこちら

被災者に対する支援策を簡単に洗い出し

―自己紹介をお願いいたします。

永井氏 私は2002年に広島市に入庁いたしまして、現職は1年目となります。普段は健康福祉局の所掌事務の総合調整など、政策調整係の総括をしております。

岩﨑氏 私は入庁が2016年になります。現職3年目となり、現在は災害発生時に実施される被災者への支援策のとりまとめ、国の災害弔慰金や災害障害見舞金、市の災害見舞金の支給等の事務を行っております。

―広島市では「被災者支援ナビ」を導入いたしました。こちらはどのようなサービスとなっているのでしょうか。

岩﨑氏 大規模な災害が広島市で発生した際に、国・県・市などからは様々な支援(見舞金の支給、税等の減免など)が実施されますが、受けられる支援は被災状況によって異なります。被災者支援ナビは、スマートフォン等を利用して対象となる支援策を、簡単な質問に回答していくことで確認することができるWebサービスです。なお、現在は、平成30年7月豪雨災害に係る広島市の支援策について導入しており、今後大規模な災害が発生した都度、当該災害に対応した新たな被災者支援ナビを追加していくこととしております。

職員の業務負担に課題

―どのような背景や経緯があり、本サービスの導入に至ったのでしょうか。

岩﨑氏 広島市は平成26年から平成30年の4年間の間に2度の大災害に見舞われました。平成26年の災害当時から「被災者支援総合窓口」を設置しており、被災者からの相談にワンストップで対応しています。被災された住民の方は、生活再建に追われている中、区役所や避難所に設置している当該窓口に出向いて相談していました。

また、「被災者支援総合窓口」では、支援策を取りまとめた一覧表を活用して相談に応じていましたが、この一覧表では多いときに110以上の支援策を掲載していました。また、当該窓口は主に他の職場からの応援職員がローテーションで従事しますが、余裕のないスケジュールの中で一覧表を読み込んで対応しなければならず、窓口を経験した職員からは「被災状況に応じて支援策を導き出せるような仕組みが欲しい」との声があるなど、業務の大きな課題となっておりました。

株式会社グラファーさんでは、転入・転出などの際に行わなければならない行政手続を、簡単な質問に回答するだけで洗い出すことができる「手続きガイド」のサービスを展開されていました。このサービスを支援策の案内に活用することができないか、と考えたことが「被災者支援ナビ」を導入するきっかけとなりました。

また、導入に当たっては、まず、支援策を実施する全39課を集めたキックオフ会議を行い、「被災者支援ナビは容易な作業で導入できること」、「導入によって住民の方の利便性が向上し、窓口で従事する職員の負担が大幅に軽減する旨」を説明しました。この会議を行ったことで、「被災者支援ナビ」の導入方法や、導入の効果を理解してもらうことができ、関係課から前向きな協力を得て、令和2年10月に被災者支援ナビをリリースすることができました。

直観的操作で回答できる

―利用するサービス・製品として、手続きガイドを選んだ決め手は。

岩﨑氏 まず、本サービスが市民の分かりやすさを重視した仕組みとなっていることです。
本サービスは、被災者が自身の世帯状況や被災状況などに係る簡単な質問に対し、順番に回答する仕様となっております。また、質問の回答結果により、関連しない質問には回答しなくてもよいよう工夫されているため、ストレスを感じることなく、直観的な操作を行うことができます。

次に、本サービスは本市側でシステムを構築する必要がないということです。
本サービスは、グラファー社で構築されたシステムを、インターネット経由で利用しているため、システム構築や、サーバ機器等の導入・管理が不要であり、自治体側のコストを大幅に抑えることができます。

また、本サービスは、支援策の概要等を記載したExcelシートを、グラファー社側がシステムに取り込むことで構築されているため、被災者支援ナビの記載内容等の更新に当たっては、自治体側はExcelシートを修正するだけで済むため、更新に係る職員の負担がとても小さいことも手続きガイドを選んだ決め手です。

被災者支援ナビの利用イメージ

―実際に導入を行い、業務の変化や反響はございましたか。

岩﨑氏 被災者支援ナビを導入したことにより、住民は被災者支援総合窓口へ出向かなくても、スマートフォン等で自身が利用できる支援策を確認することが可能となり、利便性が向上しました。また、当該窓口で従事する職員においても、被災者支援ナビを窓口業務でも利用して支援策を案内することができるため、業務負担が軽減されたと考えています。

被災者支援ナビは災害に備えて存在を知っていただくことが重要だと考えていため、プレスリリースのほか、本市の広報紙、広報番組など、様々な媒体を利用して広報活動を行いました。その結果、多数の新聞社やテレビ局からも問い合わせを受けました。また、他自治体の方からの問い合わせもあり、関心の高さが伺えました。