デジタル行政について

コンパクトなIT化が地域住民の「足」を支えるーコミュニティバス予約サービスLoCoBuS(ロコバス)の利用が拡大する理由

コンパクトなIT化が地域住民の「足」を支えるーコミュニティバス予約サービスLoCoBuS(ロコバス)の利用が拡大する理由

岐阜県多治見市でシステム開発を手掛ける株式会社ジーネックス。同社は2018年からコミュニティバス予約管理システム「LoCoBuS(ロコバス)」を開発・運用している。コミュニティバスとは国土交通省のガイドラインで、「交通空白地域・不便地域の解消等を図るため、市町村等が主体的に計画し」運行するものされ、過疎化が進む地域において重要な地域住民の足となる。同システムは岐阜県内の白川町、飛騨市にて運用を開始し、今後中津川市でも導入が決まっているなど利用が拡大している。新型コロナウィルス拡大の影響で多くの事業者が業績不振に苦しむなか、サービスの需要が拡大している要因はどこにあるのか、代表取締役の柴田俊氏に話を聞いた。

(聞き手:デジタル行政 編集部 横山 優二)

コミュニティバス予約管理サービス「LoCoBuS(ロコバス)」とは

―LoCoBuS(ロコバス)とはどのようなサービスですか?

柴田氏 簡単にお伝えすると、バスの予約システムです。事前に利用者がスマホでバスの利用日時を設定しておくと、バスの管理者側はそれに合わせて車両を用意します。白川町さんにおけるバスの利用は、ほとんどが高校生の送迎です。

例えば学校帰りの時間帯に、16時に3人、17時に5人というように時間ごとの利用者がわかるので、それに合わせて配車することになります。大きなハイエースで迎えにいったり、乗用車で迎えにいったりと人数に合わせて車を選ばれているようです。

運転手も当日の予約状況を確認でき、予約されていた利用者が乗車しない場合にはわかるようになっています。通常のバスとは違い、予約されていた人数に達しなかったら少し出発を待ってあげたり、家や本人に電話をしてあげるという配慮もよくあるようです。

―なぜそのようなシステムを開発することになったのでしょうか?

柴田氏 岐阜県の白川町さんから相談をいただいたことがきっかけでした。民間のバス会社の運営で採算がとれなくなり、自治体のコミュニティバスへ運営が切り替わるタイミングで当社に声がかかりました。自治体の方々も限られた予算のなかでバス運営をする必要があるということで、住民の方々を効率的に送迎することを考えられたのでしょう。

―ひとりひとりユーザ登録を促すのは大変ではないですか?

柴田氏 LoCoBuSが対象としているコミュニティバスの利用者は非常に小さなコミュニティの人たちなので、利用者も運用者も繋がりが強く、また、バスがなくなる危機を一緒に乗り越えた仲間意識もあるためか、とても協力的でした。特に高校生の場合は、電話よりも却ってスマホアプリのほうが便利で使いやすいと、すぐに受け入れていただけたのではないでしょうか。

シンプルな操作性と低コストが本製品の強み。自治体は住民への説明会や運用方法の検討のため、導入の半年ほど前から準備することが多いという。

利用拡大の要因は「都会のシステム」との差別化

―利用が拡大している要因はどのようなところにあると思われますか?

柴田氏 これから導入を検討している中津川市さんにも、バスの予約システムの営業は毎日のようにくるそうです。しかしいずれも機能が多すぎており、実情に合ってないとおっしゃいます。

例えば、バス関連のシステムでも、たくさんの利用者があり、乗車ポイント、降車ポイントがたくさんある場合に、AIが最も効率の良いルートを出すような実証実験が時折ニュースになりますが、それは利用者の少ない地方ではオーバースペックです。高校生3人の乗り降りにAIはまったく必要なくて、仮にルートを変えるとしても、ルール上可能であれば運転手さんが顔を見て「あー、〇〇君の家の方から先に行こうか」とか「あの近くのコンビニで降ろしてもらっていいですよ」とか自分で判断できます。データを取り込んでAIで判断する必要はないのです。

弊社のシステムを見ていただくと「余計な機能がなくて良い」となります。その分運営コストも少なく済みますし、そういった点がご好評をいただいていると思います。

―利用する自治体に最適化されているということですね。

柴田氏 高度なシステムやAIというのは大手のシステム開発メーカーさんが競い合って、どんどん出してくると思いますが、白川町さんとか中津川市さんが導入するかと言うと、多分しないでしょう。費用も高くなってしまいますし、初期設定で全部バスを登録しなければいけないとか、そのシステムについて理解しないといけないなど、導入するのは大変と感じるはずです。

地方のコミュニティバスでは管理者も運転手も、普段は別の業務をしながら兼務でバス事業を担っていることが多いです。そういった方々が、高度で複雑なシステムで設定や調整をするのは大きな負担になります。セキュリティについても、レベルを高くすればするほど手間が増えたり、使いにくかったりすると思うので、何処までやらなくてはいけないのかというバランスはとっています。LoCoBuS(ロコバス)に関して言えば、そもそも個人情報を入れず、例えばニックネームとしてAさんと登録しておけば、その情報を誰かが盗んでも悪用はされない。そういったシステムの構成はアイデアを作るときにすごく考えます。

新型コロナウィルス拡大で減少するバス利用者

―コロナの影響で岐阜県内のバス利用者が減少していることが報道されています。

柴田氏 コロナの影響はここ1年、2年すごくあると思いますが、そもそもバスの利用者は年々減り続けているので、それが先取りされるという印象です。今まで民間バス会社がやっていたバスがどんどん減っていくっていう傾向は変わらないでしょう。

ではバス利用者がいないから無くなっていいのかというとそうではありません。高校生やお年寄りの移動手段を確保するのは必ず自治体としての課題となり、その解決手段の1つが自治体が運営するコミュニティバスです。今後コミュニティバスを運営する自治体は増えるのではないでしょうか。

また、これからは突然「来月から1週間休みになります」とか「リモート授業に切り替えるので月曜日はもう学校行かないですよ」みたいなことが増えるかもしれません。そうなると、細やかで速く情報伝達できるオンデマンドでのバス運用が、より求められるってくるのかなと感じます。

LoCoBuS(ロコバス)は今後も多くの自治体の方々に活用していただけるのではないでしょうか。

―最後に、LoCoBuS(ロコバス)は岐阜近郊でしか導入できないのでしょうか?

柴田氏 導入いただける自治体のみなさんがオンラインでご対応いただけるようでしたら、全国対応可能です。実際に、当社がある岐阜県多治見市とは、同じ県内とは思えないくらい距離が離れている飛騨市においても、リモート会議のみで導入までスムーズに完了しました。

最近まで当社事業の柱はシステムの受託開発でした。自社のオリジナルのサービスを開発して全国展開していくというのはずっと目標としていたものです。これからも多くの地域住民の方々にご利用いただけるようにサービスを進化させていきたいと思います。