車両広告「WithDrive」で広がる都城市ミートツーリズム認知拡大プロジェクト【連載】

新しい車両広告「WithDrive」
都城市では、先端技術を活用して地域課題を解決し、チャレンジ精神あふれる企業の成長を支援する「都城市DXチャレンジプロジェクト」の一環として、新しい車両広告「WithDrive」を活用したミートツーリズムの認知拡大に取り組みました。ミートツーリズムとは、都城市が誇る肉と焼酎を市外から訪れる観光客に堪能してもらうための観光誘致施策で、オンライントラベルエージェント等の宿泊予約サイト(じゃらんnet、楽天トラベルなど)又は市内宿泊施設の自社宿泊予約サイトを活用し、都城市へ宿泊する観光客に対して肉や焼酎を楽しんでいただけるみやこんじょミート券(飲食券)を配付する「ミート券自事業」をはじめ、観光消費や市外輸出の拡大により地域における消費を喚起・下支えすることを目的とした事業を展開しています。このプロジェクトは、大阪エリアでのミートツーリズム認知度向上を通じて、地域経済の活性化を目指すものです。WithDriveとは、協力企業の車両に広告を設置する新しいビジネスモデルで、GPSとビーコンを組み合わせた独自の計測システムを活用し、位置や速度などの車両情報に加え、車両周辺の人流データや接触後行動などの様々なデータを収集・分析することで、より精緻な効果検証を可能にしています。このソリューションは、神奈川県川崎市に本社があるスタートアップである株式会社Essenが提供するもので、広告主、車両提供者、利用者すべてにメリットがあるものとして、例えば、プロサッカーチームのPRやオープンする商業施設の周知に活用されてきました。主要道路を走行するため高い露出効率を誇り、同じエリアを繰り返し走行することで記憶に残りやすいという特長があります。また、GPSデータとの連携により広告接触の効率性や集客効果を可視化できる点が革新的です。これまで効果測定が難しかったアナログ広告の世界に、データ分析による効果把握という新たな可能性をもたらしています。

「WithDrive」の広報戦略
これまで、都城市のミートツーリズムは、東京や九州をターゲットとしたプロモーションを行ってきましたが、大阪では未実施でした。しかし、大阪-宮崎間にはLCCが就航していることから潜在的なポテンシャルがあると考え、今回のターゲット地域に選定しました。また、これまでの利用者層が比較的年配だったことから、若年層の開拓にも期待していました。期間中、肉のビジュアルを全面に打ち出した目を引くデザインで大阪市内を中心に10台の車両広告を2.5ヶ月間展開しました。

「WithDrive」の成果
実施結果は目標を大きく上回り、接触者数は目標80万人に対して約110万人(達成率138%)、視認者数は目標8万人に対して約31万人(達成率386%)を達成しました。市内走行頻度の高い車両を事前に的確に選定できたことが、この高い成果につながったものと思われます。また、エリア別では大阪市内での接触が87.2%を占め、特に北区が最多となりました。視認者は男性比率が高く、これは市内中心部でのビジネスマンとの接触機会が多かったためと考えられます。

広告接触者の行動特性分析からは、観光スポットに関心の高い層や、ビジネスホテル・ホテルへの関心が高い層に効果的にリーチできたことがわかりました。また、都城市が誇る”肉”と”酒”に関連するカテゴリへの関心が高い層にもアプローチできました。
ミートツーリズムのウェブサイトアクセス分析では、統計モデルを用いた分析により、広告施策期間中は通常より約50%のアクセス増加が見込まれたという結果が得られました。実際に大阪からの自然検索によるHPアクセス数は、広告出稿期間中に明らかな増加が見られました。また、大阪府在住者の都城市への来訪者に関しても、令和6年10月1日から令和7年2月28日までの人流データで分析を行ったところ、広告接触者の来訪者数は0.36%となっており、非接触者の0.06%に比べて6倍、実に0.3%の違いが生じていました。結果として、車両広告により来訪が促された人数は1,281人であり、うち3時間以上滞在している日帰り客が192人、宿泊客が384人であり、両者576人を合算した経済効果は12,086,404円と見込まれる等、本施策が高い影響力を持っていたことがわかります。なお、訪問者の属性情報分析によると、肉と酒に対して関心が高い層と来訪者の関連が強いことも判明しています。

ミートツーリズムに関しては、広告を見て近くのショッピングセンターに行くといった気軽な行動変容ではなく、宿泊を伴う長距離旅行といったハードルの高い行動変容であり、行動変容に要する期間も長いことから、令和6年10月より令和7年1月半ばの運行で、令和7年2月末までの行動変容の効果検証では、全ての行動変容を捉え切れている訳ではありません。そのため、潜在的にはより大きな効果をもたらしていると考えますし、視認者が行動変容に至らなかった場合においても、ウェブサイトへのアクセス数の増等の結果に鑑みると都城市の認知拡大にも大きく寄与したものと考えています。まさにチャレンジ要素が高い本プロジェクトで、実施には不安もありましたが、今回は非常に有意義な結果が出たと考えています。
このプロジェクトの成功要因は、配送業者の車両活用による日中帯の広告露出最大化と、住民の行動パターン分析に基づく広告配置の最適化にあります。エビデンスと戦略性をもたらすWithDriveを活用した車両広告は、効果測定と最適化が可能な新しい広告手法として、地方自治体のプロモーションに大きな可能性を示したと考えています。自治体において、どこに広告を打つことが効果的なのか、また打った広告を継続すべきなのか、これまでは判断するための材料に乏しかった中、本ソリューションは一つの道標になるのではないでしょうか。自治体は様々な手段を活用し、PRを繰り広げています。我が国は今後、大阪・関西万博、アジア競技大会等、様々なイベントを控えており、インバウンドの取り込み等を含めて、PR競争はさらに過熱していくでしょう。今回、「WithDrive」が示した新しい広告の形は、特に議会等においてエビデンスが求められる自治体において、新しい有力な選択肢になるのではないでしょうか。
(寄稿:都城市 総合政策部 デジタル統括課 副課長 佐藤泰格)