高知県全県立高校で一括導入、ICT学習アプリ「ClassPad.net」とは?!【インタビュー】

高知県全県立高校で一括導入、ICT学習アプリ「ClassPad.net」とは?!【インタビュー】

2019年に文部科学省が取り組みを開始した「GIGAスクール構想」は、教育現場でのICT活用を推し進めてきた。新型コロナウイルスによる臨時休校も追い風となり、教育現場では急速に学習用端末が普及し、ICT教育の実現が進んでいる。カシオ計算機株式会社はICT学習アプリ「ClassPad.net」を開発、2022年からの高知県教育委員会と共同で検証を進め、2024年11月末に高知県全ての県立高等学校33校への一括導入を実現させた。

次世代の学校教育をサポートする「ClassPad.net」について、カシオ計算機株式会社 EdTech事業部EdTech営業統轄部国内営業部長 神長さん、同社EdTech開発部長 上嶋さんのお二人にお話を伺った。

(聞き手:デジタル行政 編集部 角田 知香)

カシオ計算機株式会社 EdTech事業部EdTech営業統轄部国内営業部長 神長さん(右)、同社EdTech開発部長 上嶋さん(左)


-ICT学習アプリ「ClassPad.net」の概要についてお聞かせください。

神長氏:クラウド型の学習アプリとして2021年に発表しました。特徴としては、主に4つの機能があります。

①デジタルノート機能 ②授業支援機能 ③学習ツール機能 ④オンライン辞書機能

それぞれの機能には、カシオ計算機株式会社がこれまで培ってきたノウハウが反映されています。たとえば「③学習ツール機能」には当社が関数電卓で培った開発技術、「④オンライン辞書機能」には電子辞書の技術が活用されています。クラウド上で関数や図形を変えるといったことが可能になるツールも特徴的です。長年教育現場でご利用いただいてきた実績をもとに、当アプリ開発を進めました。

この4つの機能をオールインワン型として利用できる点を、学校や自治体にご評価いただき導入いただいております。

ClassPad.net辞書機能

上嶋氏:カシオの教育事業では、公教育・授業の中で利用するツールの開発提供を続けてきました。ClassPad.netは「学校の教室で使う」ことに特化しています。生徒が使うノート機能や辞書機能はもちろんのこと、先生側での提出物採点や、板書の投影まで幅広く利用することができます。


-ClassPad.net開発の経緯をお聞かせください。

上嶋氏:文部科学省のGIGAスクール構想が、新型コロナウイルスの影響により全国で前倒しになり、全国の小中学校で一人一台端末が整備されました。カシオ社内でも、教育環境の変化に合わせたサービスとは何かという話になり、強みである電子辞書の機能だけではなく、その機能を授業で使えるための土台もあわせてご提供できればと考えました。ClassPad.netは一人一台の端末利用が実現してこそ活用いただけるアプリです。デジタルノートや授業支援の機能はそういった想いから生まれました。

授業現場で生まれた意見を反映


-高知県立学校へのClassPad.net一括導入された経緯をお聞かせください。

神長氏:カシオ創業者が高知県出身であるという縁もありますが、高知県では教育現場での端末活用に積極的に取り組まれており、2021年度に県立高等学校で一人一台端末を整備していました。まずは共同研究として、高知の県立高校数校でClassPad.netを実験的に導入し、実際に授業内でご利用いただいた先生・生徒さん両方からのご意見をもとに、機能の改良を重ねてきました。

2024年11月末までに高知県全ての県立高等学校33校(分校含む)で一括導入を実現しました。


-高知県教育委員会とカシオ計算機株式会社はこれまでどのような取り込みをされてきましたか。

神長氏:共同研究という形で、高知県教育委員会とClassPad.net導入校にご協力いただき、アプリ機能の改善を重ねてきました。デジタルノートや授業支援の機能は、実際に現場で使う中ででてきた意見をまとめ、開発部がおおよそ2か月に一度のペースで商品改善を続けています。

上嶋氏:開発部が実際に現場の声を聞きに伺うことも多く、1年間で50回近く導入校に出向きヒアリングを重ねています。ClassPad.netを使う授業を見学し、「どういった授業で、どの機能が使われているのか」を把握することで、実用的な改良に結びついたと思います。先生や生徒さんの生の声を聞き、「ノート機能の消しゴムが小さい」というような生徒さんからのフィードバックさえも、アップデートに反映しました。


デジタルノート機能
ClassPad.net利用の授業風景


神長氏:さらに、教員側への説明として、これまでオンライン・オフラインの両方で講習会を行ってきました。ClassPad.netの機能や活用法を提案する機会を作っています。


-高知県教育委員会はClassPad.netのどのような点を評価し一括導入に踏み切ったとお考えですか。

神長氏:製品そのままではなく、県内の学校から出たご意見をアプリのアップデートに細やかに反映できた点をご評価いただけたと考えています。現場の要望に柔軟に対応してきました。

また、デジタルノート機能も高く評価いただいています。個人でのノート利用に加え、学生同士で共有できる機能を搭載しています。共同研究や探求学習といったグループ学習の際、高知県の高校では積極的にデジタル端末を利用しています。開発当初は、ノートをとる・先生と生徒間で送受信できる機能のみでしたが、グループワークに活用いただけるよう改良しました。例えば、グループ4人でひとつのノートを自由に編集し、完成したノートをそのまま発表に利用できます。


グループワークでのデジタルノート利用風景


教員に向けたアプリ活用講習、業務効率の改善


-導入後の教育現場の反応はいかがですか。

神長氏:導入後の細やかなアップデート、グループワーク機能追加に加え、教員の方・学生の方に対してアプリの活用案内を行ったことにも評価をいただいています。教員向けにはClassPad.net利用の講習会、学生に向けてはYouTube動画で活用法の紹介などを行っています。

上嶋氏:機能アップデートに関しては、現場のご意見を参考に2カ月に1回のペースでアプリの改良を行いました。実際クラス内で利用し、皆さんが使いこなせるようになってくると、また新たな機能の要望がでてきます。例えばグループワークでの、ディスカッションを加速させるために新たなテンプレートを追加する、教員が採点時に使うスタンプの種類を増やすなどです。そういった声をつぶさにアップデートに反映させたことも好評をいただきました。

さらに教員の方からは、提出ノートのチェックや採点がClassPad.netを使うことで時間短縮でき、業務効率の改善につながったとの声が聞かれます。端末での音声録音・カメラ機能も追加したことで、美術科目で、授業の前後に課題作品の写真を提出して進捗確認するといった活用法もあります。途中経過の履歴が全て残ることが、デジタルの強みだと考えています。


-これからClassPad.netの導入を検討する自治体に向けては、どのような流れになりますか。

神長氏:自治体さんからお問合せをいただいた場合、まずはお話を聞きながら進めています。ご希望内容や予算感、学校の規模などをヒアリングし、場合によっては少数校から試験的に導入、という形にも対応しています。

高知県への一括導入は高等学校のみでしたが、小学校・中学校からのお問い合わせも増えているため、小・中学校向けのプランも拡充しました。

上嶋氏:自治体や学校の希望にあわせてプランを選んでいただけるほか、収録する辞書のカスタマイズも可能となっています。


-今後の展開について教えてください。

神長氏:さまざまな現場で、我々では気付かないような事例をいただくことでClassPad.netのアップデートが実現することから、多くの学校にご利用いただきたいと考えています。小学校・中学校への展開に関しては、ご興味を持っていただいた自治体に積極的にお話を伺いにいきたいと思います。

上嶋氏:教育現場の皆さんからご意見をいただくことで、ClassPad.netを日本の教育に合ったものに仕上げていきたいと考えています。そして教員側の負担を軽減していくことも目標のひとつです。