ほぼ全ての自治体が適格請求書発行事業者登録を行い、7割が既存システムを改修してインボイス制度に対応するが、制度メリットを感じるに至らない状況が明らかに【デジタル行政自治体アンケート調査】

ほぼ全ての自治体が適格請求書発行事業者登録を行い、7割が既存システムを改修してインボイス制度に対応するが、制度メリットを感じるに至らない状況が明らかに【デジタル行政自治体アンケート調査】

デジタル行政は、令和5年2月から3月にかけて、都道府県(47自治体)、東京都特別区(23自治体)、政令指定都市(20自治体)、中核市(62自治体)、一般市(710自治体)、町(743自治体)の合計1,605自治体の会計課や財政課などインボイス制度対応を担う担当課を対象に、消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)に関するアンケート調査を実施した。

令和5年10月1日から消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されることを受けて、自治体の対応状況や課題、インボイス制度に期待することなどを聞いた。

アンケートの回答数は255件である。

適格請求書発行事業者の登録申請状況

適格請求書発行事業者の税務署への登録状況(2023年3月15日時点)は、「既に全部を申請済み」が55.3%と最も多く、次いで「既に一部を申請済み」が29.0%と続く。
また、「3月末までに申請予定」(13.3%)、「4月以降になるが申請予定」(0.4%)を含めると、インボイス制度に取組む自治体は250自治体、98%に上る。

Q.ご回答時点で、適格請求書発行事業者の税務署への登録申請状況を教えてください。(ひとつだけ)n=255

出典:シード・プランニング

インボイス制度のシステム対応

インボイス制度のシステム対応状況は、「既存のシステムを改修」して対応する自治体が70.6%で最も多く、次いで2割弱が「検討中」(18.0%)と続く。
「未対応(検討もしていない)」が9.4%あるなど、今後の制度動向を見ながら判断する自治体もあると考えられる。
なお、郵送アンケートと並行して電子インボイスの取組みに対する電話ヒアリングを71自治体に対して実施したところ、94.4%が「対応していない」と回答するなど、「既存のシステムを改修」が主に請求書等の様式変更などを示すことが明らかとなった。

Q.ご回答時点の、インボイス制度のシステム対応状況を教えてください。(ひとつだけ)
n=255

出典:シード・プランニング

インボイス制度導入に係る相談先・情報収集先

インボイス制度対応において、自治体が相談する先や情報収集先について聞いた。
制度対応の相談先は、「システムベンダー」が47.5%で半数近くを占め、次いで「国」が34.9%、「近隣の自治体」が34.5%で3割以上となった。
制度に係る情報収集先は、「国」(67.5%)が7割近くを占めるほか、市区町村では「都道府県」(60.4%)が6割、「近隣の自治体」(56.1%)が6割弱となるなど、国の動向を注視しながら自治体間で情報を共有する動きがみられた。
「その他」では、「税務署」と回答する自治体が多く、直接、税務署に相談等を行う動きもみられた。

Q.インボイス制度の導入で、相談先や情報収集先について教えてください。(いくつでも)
n=255

出典:シード・プランニング

インボイス制度の対応期間

インボイス制度への対応期間は、「半年以内」が38.8%で最も多く、次いで「1年以内」が25.9%で続くなど、1年以内に対応可能な自治体が6割以上となる。
一方で、「1年以上」(13.3%)や「分からない」(17.6%)との回答が全体の3割を占めるなど、2023年10月から始まるインボイス制度の円滑な運用が懸念されるところである。

Q.インボイス制度に対応するまでに掛かる、おおよその期間を教えてください。(ひとつだけ)n=255

出典:シード・プランニング

インボイス制度への期待

インボイス制度への期待について聞いたところ、「期待することはない」(67.1%)が全体の約7割を占め、現時点では自治体がインボイス制度に対してメリットを感じていない傾向がうかがえる。
一方で、全体の1割が、「職員の業務負担の軽減」(12.2%)や「業務のデジタル化による効率化」(11.4%)を上げるなど、今後の制度の円滑運営におけるデジタル化への期待が垣間見えた。
その他の回答では、「地方消費税交付金の増額」(n=2)や「複数税率の下で、適正な課税を行うことに資すると考える」とのコメントもみられた。

Q.インボイス制度に期待することがあれば教えてください。(いくつでも)n=255

出典:シード・プランニング

インボイス制度に対する課題

インボイス制度に対する課題を自由記述で聞いたところ、約3割の自治体から回答が得られた。
回答結果を整理すると、「情報不足(制度の理解不足含む)」を上げる自治体が9.8%あり、自治体及び民間を含めた制度への理解や周知、申請の記載例等の具体的なマニュアル等を望む声があった。
次いで、6.7%が「業務量増加・煩雑化」に係るコメントを寄せており、制度対応への職員の負担増加や、煩雑な事務負担の発生を懸念する傾向がある。
また、6.3%が課税・非課税の判断や対象勘定科目の抽出など、インボイス対応の要否の判断に苦慮する点を指摘するなど、制度開始に向けて不安を感じる声が一定程度聞かれた。

Q. インボイス制度に対する課題について、お感じになられていることを自由にご記入ください。(自由記述)n=255

出典:シード・プランニング

本調査の概要

■調査対象

都道府県(47自治体)、東京都特別区(23自治体)
政令指定都市(20自治体)、中核市(62自治体)
一般市(710自治体)
町(743自治体)

合計1,605自治体(会計課や財政課などインボイス制度対応を担う担当課)
回収数255件(回収率15.9%)

■調査方法 郵送アンケート調査

■調査期間 2023年2月13日~2023年3月15日

■調査主体 株式会社シード・プランニング デジタル行政 編集部