観光施策の実効性とデータ活用の課題に関する自治体の実態

観光施策の実効性とデータ活用の課題に関する自治体の実態

新型コロナウイルスによって停滞していた観光需要は回復基調にあり、観光は多くの自治体にとって地域経済の活性化を担う重要な施策領域となっている。しかしながら、その取り組みの成果は限定的であり、実効性を高めるための戦略的見直しが求められている。

このような背景の下、株式会社うるるが運営する公共入札・落札支援サービス「入札BPO」と株式会社地域創生Coデザイン研究所は、西日本を中心とした全国100の自治体を対象に「観光活性化の課題とデータ活用に関するアンケート調査」を実施した。自治体が観光分野においてどのような課題を抱えているのか、またデータ活用の実態と今後の可能性について明らかにすることを目的としている。

※出典URL:https://www.uluru.biz/news/15176

観光施策の「成功実感」はわずか3割未満

調査によると、観光施策が「成功した」と回答した自治体は全体の3割未満にとどまった。とりわけ、インバウンド観光客の獲得においては一定の成果が認められるものの、全体としては手探り状態にある自治体が多く、明確な成果指標や検証体制が整っていない実情が浮き彫りとなった。

ニーズが集中する「人流データ」

今後活用したいデータとして、最も多くの自治体が挙げたのは「人流データ」(74%)であった。これまでのアンケート調査や統計データに加え、リアルタイムでの観光客の動向を把握できるデータへの関心が急速に高まっていることが示された。これにより、より精緻な施策立案やPDCAサイクルの実行が可能となると期待される。

データ活用の壁:「分析手法」と「人材」

一方で、データ活用の課題として最も多く挙げられたのは「データの分析手法が分からない」(69%)という回答であった。さらに、「具体的な施策への反映が困難」(65%)、「分析や活用を担う人材が不足している」(59%)といった課題も顕在化している。これは、自治体におけるデータリテラシーや専門知識の不足、また分析業務を内製化するための人材・組織基盤の未整備を物語っている。

観光施策の高度化に向けた今後の展望

本調査からは、観光施策におけるデータ活用の必要性が強く認識されつつも、現場ではその実装に向けた具体的なノウハウや支援体制が不十分であるという構造的課題が明らかとなった。自治体としては、今後、民間事業者との連携をより一層推進し、専門的知見の導入や共同による施策設計、また人材育成を戦略的に進めていく必要がある。

うるるが展開する「入札BPO」には、こうした自治体のニーズに応えるべく、観光分野に限らず多様な分野での民間提案機会が集まっている。今後も同サービスは、自治体と民間企業の橋渡し役として、実効性のある公共施策の実現に貢献していくことが期待される。

本調査は、自治体における観光施策の再構築と、データ駆動型政策の基盤整備に向けた重要な一歩となるものである。今後は本調査の知見を踏まえた実践的な取り組みの共有・連携が、自治体間や官民連携においてますます重要となるであろう。

(執筆:デジタル行政 編集部)